アインクラッド 後編
優しさに包まれて
[7/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
っ。お願いしますっ!」
「う、うん。こちらこそ」
何故かは分からないがお互いに座ったまま礼をすると、わたしはウインドウから四十七層のマップを呼び出してシリカちゃんにも見えるように可視化した。本当は《ミラージュスフィア》というアイテムがあればもっと精密で分かりやすいマップを見せられるのだけど、残念ながらそんな高級品は持っていない。
「えっと……まずここが、四十七層主街区の《フローリア》。四十七層は《フラワーガーデン》って呼ばれてて、フローリアも含めてフロア中がお花畑で一杯なんだ」
「そ、そうなんですか!? 凄い……!」
『お花畑』のキーワードに反応して、シリカちゃんがパァッと目を輝かせる。
「うん。本当は、北の端っこにある《巨大花の森》ってところがとっても綺麗なんだけど……」
「それはまたのお楽しみにします」
取っ掛かりから会話を広げようとして話を続けると、シリカちゃんはそう言って笑いかけてくれた。ようやく会話の歯車が少しずつ噛み合ってきたような気がして、ほっと胸を撫で下ろす。そして本題に入るべく、《思い出の丘》に続く街道を指で辿ろうとすると、シリカちゃんの言葉がそれを遮った。
「でも、色んなことを知ってて、やっぱり凄いですよね。四十七層にも、他の人の手伝いで行ったんですか?」
「え? あ、う、うん。そんな感じ、かな……」
シリカちゃんからすれば、何気ない話のつもりだったのだろう。けれどその一言にわたしの胸が小突かれて、弱々しい返事を返したわたしの指の動きが鈍った。喉の奥に酸っぱい味を感じて生唾を飲み込みながら俯くわたしを他所に、シリカちゃんは続ける。
「凄いなぁ。こんなことになったのに、ずっと他の人のために頑張り続けてるんですよね。あたしじゃ、絶対真似できないですもん」
――ピタリ、と。わたしの指が動きを止めた。視線は既に、自分の膝まで落ちていた。
「エミさん? どうしました? 大丈夫ですか?」
シリカちゃんの心配そうな声が、遠くの方で聞こえる。
――大丈夫だって、返さなくちゃ。いつも通り、笑顔で。
無理矢理に口元を吊り上げようとするが、ピクピクと震えるばかりで一向に上手く行かない。今までは、無理出来ていたのに。今までは、無視できていたのに。昨日マサキ君の前で泣いてから、それが全然できなくなってしまった。どうしよう、どうしよう……。
罪悪感、孤独、恐怖……全部がぐるぐるに混ざり合った、泥水みたいな色の感情が頭の中を支配して、耐えられなくなったわたしは――。
「……違うの」
遂に、そう口に出した。
「え……?」
何が何だか分からない、と言った風に、シリカちゃんが首を傾げる。わたしは震えながら息を吸って、声として吐き出した。
「違うの
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ