アインクラッド 後編
優しさに包まれて
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済ませ、二人に先立って自分の部屋に引っ込んだ。
久々に見るふかふかのベッドに仰向けに寝転ぶ。ベージュの天井に、オレンジ色のライトが滲んでいる。部屋は空調も効いていて、今までの隙間風が入り放題だった部屋に比べれば段違いに暖かい。でも何故か、背中に触れるシーツがやけに冷たく感じて、わたしは身体を縮こめながら寝返りを打った。
ベッドサイドの小さなランタンが何となく目に入る。その前を、一人の青年の姿が過ぎった。
「マサキ……君……」
改めて思えば、不思議な人だ。
無表情で、感情が見えない。その理知的で冷静そうな視線は、一見冷淡にさえ思えてしまう。
けれどわたしや、今日だってシリカちゃんを助けていて。それは、彼の外見からはおおよそ想像もつかないような行動だった。
それに何より、今朝彼が起きたときの、あの目――。
「〜〜〜〜っ!」
そこまで想像した途端、頬が真っ赤になって熱を発しているのが自分でも分かった。咄嗟に体をもう四分の一回転させ、枕に顔を埋める。ひんやりとした布地が火照った頬に心地いいが、脳裏に浮かぶ彼の姿が消えることはなかった。やがてわたしは諦めて、もう一度仰向けになった。
――マサキ君は、本当はどんな人なんだろう?
どんな風に物事を捉え、考えているんだろう?
どうして、わたしのことを助けてくれたんだろう?
どうしてわたしはこんなにも、マサキ君のことが気になるんだろう?
次々と浮かぶ疑問とは裏腹に、その答えはいつまで経っても分からなかった。そうしているうちに、その疑問はマサキ君と言う人物をもっと知りたいという欲求に変わる。
それから暫くベッドの上をゴロゴロと転がり、数十回の往復を経てベッドの端に流れ着いたわたしは静かに足をベッドから下ろした。泥棒みたいな忍び足で廊下に出て、二つ隣のドアを叩く。程なくしてドアが開き、中からマサキ君のクールそうな無表情が覗いた。
「どうした?」
「え!? え、えっと……あ、明日のこと! 打ち合わせとか、しといた方がいいんじゃないのかなって! だ、だからその……入っても、いい?」
今更ながら自分が何も考えずに来てしまったと気付き、慌てて取り繕う。冷や汗を流すわたしをマサキ君は切れ長の瞳で一瞥すると、「そうか」と呟いて部屋に戻って行ってしまった。ドアは閉じられていなかったため入ってもいいのだろうと考えて、そろそろと中に体を滑り込ませる。
「適当に座ってくれ」
「う、うん……」
部屋の造りはわたしの所と――当然と言えば当然だが――完全に同じで、部屋の右手にベッド、その奥にティーテーブルと、それを挟んで一人掛けのソファ二つが置かれていた。わたしは十秒ちょっと考えて、既にマサキ君が座っていたソファの向かい側に腰掛けた。彼は何やらメ
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