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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
優しさに包まれて
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「……済まない。遅かった」

 平坦な、しかしほんの少しだけ苦そうな声色で、マサキ君は《竜使いシリカ》に言った。膝から崩れ落ち、項垂れた彼女は、溢れ出る涙を吹き飛ばすように激しく首を振った。

「……いいえ……あたしが……バカだったんです……。ありがとうございます……助けてくれて……」

 途切れ途切れに紡がれる言葉は、彼女が嗚咽を堪えている何よりの証拠だった。それから少しの間、押さえ切れなかった彼女のすすり泣く声が暗澹(あんたん)とした森に充満する。わたしはこんな時でさえ、ただ無言でその場に立ち尽くすだけ。マサキ君は何かを考えていた風だったが、やがて数歩進み出ると、少女の傍にしゃがみ、目前から水色の羽根を拾い上げた。

「あ……」

 突然の行動に、少女は声を漏らしながら目線を上げた。両頬に付いた涙の筋を拭うこともせず、呆けた顔で視線をマサキ君に注いでいる。全員の視線が集中する中、マサキ君は羽根を一度軽くタップすると、現れたウインドウを可視化させ、「見ろ」と視線で言った。わたしが近付いたのに一歩遅れて少女も立ち上がり、二人して半透明のウインドウを覗き込む。するとそこにあったのは、他のアイテムと変わらない、簡潔かつ淡白な概要。殆どは空欄になっていて、埋められているのはたった二つ、重量と名称――《ピナの心》。

「……ピナ……ピナ……」
「ま、待って!」

 “心”の一文字にピンときたわたしの横で少女が再び嗚咽を上げ、わたしは反射的にそれを止めようと割り込む。

「心アイテムが残っていれば、まだ生き返らせられるかも知れないから!」
「え!?」
「え、あ……」

 思わず口を開いてしまったことに今更気付き、言葉に詰まるわたし。と、隣でマサキ君がその後を引き継いだ。

「……最近になって判明したことだがな。四十七層にある《思い出の丘》の頂上に咲く《プネウマの花》が、使い魔蘇生用の――」
「ほ、ほんとですか!?」

 腰を浮かせて少女が食いつく。マサキ君が頷き、少女の瞳が希望の光に染まる。しかし、それは五秒と持たずに再び消えてしまった。

「……四十七層……」

 少女は(かす)れた声で呟き、力の抜けた肩が再びガックリと垂れた。四十七層といえば、この三十五層より十二も上の階層。この辺りを狩場にしているボリュームゾーンのプレイヤーからすれば、遥か上のフロアだ。プネウマの花の獲得はおろか、命さえ保障はできない。
 視線を地面に落としてしまった彼女にマサキ君が水色の羽根を返すと、彼女は僅かに顔を上げて、言った。

「……ありがとうございました。今はまだ無理そうですけど、がんばってレベルを上げて、いつか……」
「無理だな」
「え……?」
「使い魔の蘇生が可能なのは、死亡後三日間だけらしい。それを過
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