例えばこんな俺は赦されないと思ってただろ
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々調べて――その結果、自分と母のやったあの行為が原因なんだと知った。
「それからは大変だった。近所の人に手伝って貰ったりもしたけど、母さんが生活の支えだったもんだから必死に家事洗濯買い物とやらなくちゃいけなくなって・・・・・・それでふっと見ると、母さんのおなかが膨れていくんだよ。妊婦さんなんて見るのは初めてだったから、不安しか感じなかった。これから母さんがどうなってしまうのか分かんなくて布団の中で眠れない日を過ごすのも、珍しくなかった」
出産には――無理を言って立ち会った。自分が父親なんだと思うと、顔も知らない自分の父が逃げ出したことをどうしても思い出す。でも、母を捨てたくなどない。ずっと家族として一緒にいたい。母さんに悲しい顔なんてさせたくなかったから、目の前で苦しみながら赤子を産もうとする母さんの手をずっと握った。
「赤ちゃんが生まれる瞬間なんて、中学生で見る事になるとは思わなかったな。こう、頭から出てきてさ。最後はお医者さんがその頭を掴んでずるっと・・・・・・赤ちゃんが泣きだした時はびっくりしたけど、母さんと一緒に喜んだ。ずっと妊娠させてしまったことに罪の意識ばかり感じてたけど、誕生の瞬間を見ちゃうと・・・もう止めておけばよかったとは思えなかった」
生命の誕生の瞬間に立ち会って、産まれたその子供を笑わせていたいと素直に思えた。そして漸くゴエモンが自分なりに区切りをつけようとした矢先に――判明した遺伝疾患だった。ひたすら、ソウに申し訳なかった。それでも母さんと一緒に面倒を見た。泣き出したらあやして、笑ってくれたら一緒に笑って。
「ソウの世話を焼いてるいちに、俺は自分が何なのか分からなくなった。ソウの父親として面倒見てるのか?ソウの兄として面倒見てるのか?父と名乗らない怖がりな俺に父親を名乗る資格があるのか?将来、ソウは真実を知ってなお俺の事を恨まずにいてくれるか?」
ソウとちゃんと向き合うのが怖い。自分が誰かを好きになって、結ばれて、営んで子供を産む瞬間に、ソウが自分の事を見ている気がするのだ。何を伝えるでもなく、見ている気がするのだ。その目がどうしようもないくらいに不安を掻きたてられて、人を好きになることそのものが怖くなっていく。
ソウは時々、何という用もなく俺を見ていることがある。遊んでほしいわけでもお腹が減ったわけでもない。言葉はまだ全然覚えていなかったから質問しても答えてはくれない。その目が脳裏にこびり付く。
今はいい。まだ年齢的には高校生だ。でも大学生になって結婚できる年齢になったら?成人したら?その時に本気で相手を好きになってしまった時に、自分はそれにどう向き合えばいい?ソウの目を気のせいだと言い切って目先の幸せに溺れられるか?自分勝手な理由で恋を諦められるか?相思相愛だった時に、断った瞬間の傷
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