彼の第一歩
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捨てなかった理由の一端を見た。
「チ・・・形だけの屑籠かよ」
どうやらそれは形だけ燃えるごみ用のゴミ箱であっただけで、空き缶専用の屑籠であったらしい。証拠に、空き缶がこれでもかと詰め込まれている。
ゴミの事で呆れの溜息を吐いた手前、流石にポテトチップスの袋を突っ込む訳にもいかず、しかしこの近くにコンビニなども無いので捨てに行けない。
返るまでずっと持って歩くのも億劫になった海童はポテトチップスの袋を拳に収まるぐらいに握りつぶした。
「・・・余計な手間掛けさせんな・・・」
運びやすくしてから、ゴミ箱を探すべく海童は再び歩き出すのだった。
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たっぷり時間を掛けて外を歩いた海童は、何時の間に買っていたか緑茶を飲みながら戻って来ていた。
建物の玄関先にあるゴミ箱へ空き缶を投げ入れ、上手くはいった事を確認して小さくガッツポーズを取る。
「・・・ん?」
自分が止まっている建物に付き中に入った海童は、自分の部屋のドアの前で立ち往生している少女の姿が目に入る。
艶やかな黒髪はサイドテールにまとめられており、元が長いのか胸辺りまで届いている。スタイルも中々に良くて、ちらと見える横顔はまさに美少女という言葉が似合う。
海童にとっては『見覚えのある』その少女に近付くと、背後から普通に声を掛けた。
「俺の部屋の前で何している、ハル姉」
「ひゃっ!?」
ハル姉と呼ばれた少女は軽く飛びあがって後ろを振り向いた。・・・姉、とは付けて呼んでいるものの、身長の高さ的には逆に見えてしまうが。
「そ、そっか。もう起きてたんだ。海童」
「ああ。・・・迎えに来たのか」
「まあね。久しぶりに会うわけだし、道や地理も教えておこうと思って」
部屋のかぎを開け中に入って時計を見ると、今から朝食を取ると危ないかどうかという微妙な時間であり、その事もあって面倒くさかったか海童は栄養補助ゼリードリンクのみ口にして制服に着替え、カモメの様なマークと『Navy』と書かれた帽子をかぶって、ハル姉こと春恋に案内してもらいながら、通学路を行く。
「それにしても・・・考え無しに行動するのは昔からよね、海童は」
「・・・は?」
「家出同然で家を飛び出したかと思ったら全寮制の中学へ入って、卒業したかと思ったら今度は何も知らない高校へ入学するんだから」
「試験、面接無しで全寮制だ。楽できるにこした事は無い」
「はぁ・・・全く」
これでもし、去年までは女子高だったから女子が一杯だし! 何て事を口にしていたのならば春恋の竹刀による制裁が待
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