騒がしい春の協奏曲(四月)
第一章 小問集合(order a la carte)
第二話 彼らとの出会い
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だった。
自己紹介で聞いたところによると、試験の日に風邪を引いて途中退出をしたそうだ。
同じようにあの試験を途中で退席した人が居たものだとシンパシーを覚えるけれども、彼女の視線は吉井に固定され、おそらく僕のことは司会に入っていないのではないだろうか。
熱烈な視線、もう彼以外の事は見えていないと言うのが傍目からも分かる。
黒い覆面の皆さんが釘バットを取り出そうとしているのがちらりと見えた気がするが、きっとこの教室の汚さと同じように考えては行けないことなのだろう。
「あ、あの吉井君、同じクラスですね」
「う、うん、姫路さん。…あのさ…」
「姫路、その後の体調はいいのか?」
「……あ、はい」
あからさまにがっかりしている吉井を余所に、若干の挙動不審は残しながらも姫路さんは答えている。
「あ、姫路さん。よかったー、女子はうちらだけかと思って。けっこう心細かったんだよ。」
「あら、それは私だけでは心許ない、と言うことでしょうか?」
「いやいや、そんなことは言ってないから。」
「あの、そちらの銀髪さんもこのクラスなんですか?」
「申し遅れました、私は妃宮千早と申します。今年から転入しました。どうかよろしくお願いいたしますね、姫路さん。」
「島田さん、それと妃宮さんも私のことは瑞希でいいですよ?」
「そう?なら、うちのことも美波でいいわ。」
「なら僕も姫路さんのことを……」
「そこで断られたら元も子も無いぞ。」
「歓迎するよ!!」
もはや自棄に成った感じで叫ぶ彼の“バカさ”はいっそ清々しく感じる。
何なのだろう、僕の知らない人種なのだろうか。
もはや宇宙人だと言われても納得しそうだ。
「それにしても……、髪の毛はサラサラで肌はスベスベ、まつげはパッチリですし……胸なんかも私よりありそうです。妬ましい限りです……」
「そうなのよ、それに千早ってばすっごく細いのよ!!」
「なっ……なんですって!!!」
なんか凄い視線でにらまれてしまっていますよ、僕。
島田さんとのついさっきの出来事を思い出す。
そして、ついつい島田さんの胸元に視線を向けてしまう。
なるほど、だからパッドを見ていたのですね。
「見なさい、あれが強者の余裕ってやつよ。」
「そうですよね、妃宮さん。あなたは私たちに喧嘩を売っているのですか?」
正真正銘の本物の女子ペアの背からは地獄の業火のように猛り狂った怒気が溢れだしているかのように見える。
これはどうにかしないと……。
「そ、そういえば、吉井も秀吉もくびれていますし、髪の毛もさらさらですよ……」
『なんですってぇ!!』
ほとんど妖怪レベルの視線が今度は吉井と秀吉に矢のごとく突き刺さる。
びくりと固まってしまった二人。
何だろう、その思考ルーチンが僕にはま
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