第二章
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第二章
「そのシチリアのワインだよ」
「赤ね」
「そうだよ、おごりだよ」
笑顔でエリーに話してきた。
「さあ、一本ぐっと飲んでね」
「随分と気前がいいのね」
「イタリア人、特にシチリア人は気前がいいんだよ」
「初耳よ、それは」
「初耳でも事実だよ。だからね」
「飲ませてくれるのね」
「そうだよ。一本気軽にね」
エリーに勧める。そうしてだった。
エリーはそのワインを一本飲んだ。そのうえで店を出ようとする。その時にマスターが彼女にまた言ってきたのであった。その言葉は。
「多分」
「多分?」
「破れたね」
こう彼女に言うのだった。
「そうだね」
「それもわかるの」
「その落ち込みようはそれだね」
こう言うのである。
「そうだね」
「そうだと言えば?」
「もう一本どうだい?」
またワインを一本出してきたのだった。
「おごりだよ、これも」
「それを飲んでなのね」
「忘れたらどうだい?さっさと」
「忘れられたらね。お酒で」
「失恋はワインで忘れるものだよ」
これがマスターのアドバイスだった。
「とことんまで飲んでね。それで次の恋に生きるんだよ」
「それができればいいけれど」
マスターの言葉に応えながらだ。席に戻りだ。そして彼とまた話した。
そうしてだ。エリーはまたグラスを取ってだ。ワインを飲むのだった。
そのうえでだ。彼女自身のことを話すのだった。
「私はね」
「うん、どうしたんだい?」
「相手がね。ちょっと変わっていてね」
「変わっていた?」
「そう、家庭があったのよ」
そうした相手だというのだ。
「オフィスの上司で」
「おやおや、それはまた」
「結局。彼は家庭を選んだわ」
そのワインを飲みながら話す。
「それで私は。仕事も辞めて今はここにいるのよ」
「不倫の恋が終わって。それで」
「こうなるっていうのはわかっていたわ」
顔は自然に俯いてしまっていた。そうならざるを得なかった。
「けれどね。それでもね」
「辛いのかい」
「本気だった」
この言葉も出した。
「本当にね。本気だったわ」
「そうだったのかい」
「けれど。適わない恋だし、不倫なんて」
「まあそうだね。それで手に入れても結局はね」
「そんな幸せはね。本当の幸せじゃないから」
「そうなるしかなかったね」
マスターも不倫についてはこう話した。
「はっきり言ってね」
「そうよね、やっぱり」
「じゃあ余計に飲むべきだよ」
「さらになの」
「そう、ワインならどんどんあるから」
今は一本だけ出している。しかしそれ以上出してはいなかった。
それでもだ。エリーにこう話すのだった。
「飲むんだね。それに」
「それに?」
「外にも出て」
こうしたこ
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