俺馴?その2ー2
[6/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
しているのだという真実味を以て、いりこはその人工知能と正面から向き合った。
『おのれ、おのれ鞠男め!いつかチンギス=ハンになって息子に復讐させてやるぅぅぅッ!!』
「うわー断末魔が酷いなぁ・・・確かに義経は中国大陸に渡ってチンギス=ハンになったって説はあるけど………」
この台無し感こそが金ヶ崎クオリティ。そして次の瞬間、美しいエフェクトをばらまきながら義経は大爆発を起こした。主人公武将はその最期を目に焼き付けると、空へと高く飛び去っていった。そして、画面に現れるメッセージがとうとう長い戦いの終了を告げた。
『雌雄決着ッ!! 遊 戯 達 成 ッ!!』
「やったぁぁぁーーーッ!!クリアーだぁぁぁーーーーッ!!!」
周囲からどっと湧き上がる歓声をバックコーラスに、いりこは余韻に浸って両手をガッツポーズで振り上げた。画面にはエンディングの歌とともにスタッフロールが流れ始める。その嬉しさ。スタッフが十重二十重に重ねた悪意を打ち破ったその歓喜を共有したくて後ろを振り返り――
「………いない、か」
ほぼ無意識に、見慣れたあの男の顔が無いかを探してしまっていた。ひょっとしたらまだゲーセンの中にいて、こちらを見てくれているんじゃないかと無意識に期待して、一緒に喜んでくれるかもしれないと小さなロマンスを描いていた自分に気付いて、馬鹿だなぁと自嘲した。
結局のところ、このエンディング画面を一緒に見たかったのだ。普段はノリが悪いさざめでも、自分と楽しさを共有してこの一体感に参加して欲しいと心の内では願っていたのだろう。そんな自分に呆れて小さくため息をついた。
今からこの調子では、いつか別れが来てしまった日にはどうなってしまうのだろう。今の些細なことでさえ胸にちくりと刺さるものがあるのに、それがいつか抉るような痛みを持つ日が来るのだろうか。その痛みを前にした時、自分はひょっとしたら後悔するかもしれない。こんな思いをするくらいなら、淡い思いなど抱かなければよかったと。
嬉しい筈なのに、そんなことを考えてしまう胸中は締め付けられるよう。だが――
「なんだ、クリアしたってのに随分シケた顔してるじゃないか。とうとう自分の行いの生産性の無さを思い知ったか?」
気が付けば、自分が振り返った右ではなく反対の左に、その男が我が物顔で座っていた。
「え……さ、さざめくん!?いつからいたの!?」
「今来た」
「なら何か一言声をかけてくれても良かったんじゃない!?」
いつも人にもやもやした思いを抱かせる空気の読めない人間の癖に。
どうしてこの男は、いつもいつも――
「なーんでさざめくんはいつもこういう時だけ間がいいのかなぁ……」
「何だその間ってのは?俺はそろそろお前もゲーム止めてるだろうと思って暇つぶしを中断した
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ