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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
七月二十五日:『虚空、虚数』
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らなど。
 さぁ、諦める時だ。諦めて……

 すかさず、背後にルーンのカードを。『障害』のルーンを展開して、疾駆する。これで、あと三秒は稼げるだろう。

「あと、五百メーター……こんなに遠いなんてな! あァ、生きて帰ったら、禁煙でもするかァ!」

 雨で張り付く天魔(あま)色の髪を撫で付けて、すっかり上がった息を咳き切らせながら試みもしない事を口にする。そうでもしなければ、心から先に折れそうだ。
 蜂蜜酒(はちみつ)色の瞳に、決意を灯す。そして、自らの瞳だからこそ気付けない。その金色、微かに赤く燃えている事に。

「────グ!?」
『てけり・り!!』

 そして、気付いた刹那。第三印にして最強の『ヴーアの印』を展開した。展開した刹那、印が弾け跳ぶ。貫徹したのは焼夷榴弾、まだ殺傷能力は失われていない。
 ショゴスの防御を持ってして、炸裂した衝撃に吹き飛ばされた。しかし、吹き飛ばされただけだ。ショゴスが居なければ、これで詰みだっただろう。

「かっ……は……!」

 転がりつつ、苦痛に詰めていた息を吐く。炸裂した焼夷榴弾に、焼けた肌が痛い。
 既に、回り込まれていたか。どうやら敵の言葉を信じてしまうなどと言う、愚策中の愚策を犯したらしい。

「さて、王手(チェックメイト)かな?」

 悠々、『障害』のルーンを切り裂いて歩み出た少女の声。それすら、どこか遠く聞こえて。

「終わりだ、『暗黒将軍(ダークジェネラル)』。『時計人間』や『女王』、『貴婦人』の時のようにはいかない……お前は、また『混沌』に還れ!」

 取り出され、構えられたのは拳銃でありながらライフル弾を運用する化物級の拳銃砲(ハンドカノン)────『トンプソン・コンテンダー=アンコール』。

────さぁ、諦めろ。そして代われ、この『(■■■)』に。その身を、明け渡せ───!

 その銃口が、米神に突き付けられた。後は、銃爪を引けばそれで、脳漿を路面に打ち撒けて終わり。その跡形も、雨が洗い流すだろう。

『この、“悪心影(あくしんかげ)”に!』

 ならば────生きるには。出来る事など……ただ一つ!

「────撃てよ」
「『何─────?」』

 少女と、『悪心影(だれか)』が驚く声を聞きながら。
 玉虫色の、刃金に包まれた右手を─────

「この右手が、届く範囲は……」
『き、貴様……この、うつけめが』
「そんな発足(ブラフ)が、ボクらに……」

 捧げるように、前に─────

「俺の、理合の間合い(バリツ)だ!」
『この期に及んでも……是非もない、だと!?』

 伸ばして──────!

ウィルマース協同協会(ウィルマース=ファウンデーション)の|黒服執行官
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