第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
七月二十五日:『虚空、虚数』
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に呼び掛けた彼女の背後────約一キロの彼方から。
『イブン=ガジの粉薬を混ぜた銃弾とナアク=ティトの障壁を刻んだ、この一発────』
『てけり・り?!』
音より速く飛来した『何か』に、『楯』は真円の大穴を開けられて四散した。然もありなん、それはある戦争では『狙撃した敵兵の上半身と下半身を分断した』とまで言われ、強固な外壁を持つ航空機を撃ち抜いてハイジャック犯を狙撃する際にも用いられる化物級の対物狙撃長銃────『バレット M82』。
それを抱え、密集する摩天楼の屋上を跳ね翔ぶ黒い雨合羽。セラの『風に乗りて歩むもの』の効果を得た、“水神クタアト”の主、ティトゥス=クロウ。
『耐えられる筈も、無かったな……粘塊』
音速を遥かに越えた徹甲弾と榴弾、焼夷弾の役割を果たす『HEIAP』に、その弾に籠められた呪詛『ナアク=ティトの障壁』。あらゆる邪悪を遮断する魔術に、この程度の『楯』では立ち向かいようもない。
崩れ落ちた『楯』、否、崩れ落ちるよりも早く。その『大穴』を潜り抜けて、セラは走る。大気を蹴り、加速し続けながら。
「二対一、しかも足止めも無理な重火力に高速度か! 無理ゲーにも程があンぞ!」
テレパシーでリンクした状態にある嚆矢は、ショゴスの一部が混沌に還った事を悟って吐き捨てた。悪態くらいは吐いて出よう、空の覇者である戦闘機と陸の覇者である戦車を同時に相手にしている、軽装歩兵の気分。それほどの手詰まりである。
追い付かれる前に、手頃な路地裏に逃げ込む。遮蔽物の無い通りでは、あの津波の破壊力と浄化力を併せ持つ貫徹焼夷榴弾の良い的。しかし、しかし。この狭所では。
「行け────『風王の爪牙』!」
「クソッタレが……!」
風の速度と自在さを持つ誘導式銃弾の、良い的に他ならない────!
「────ッ!!」
掲げた偃月刀より第二印、『キシュの印』が虚空に浮かぶ。浮かぶと同時に、七発を受け止めて砕け散る。
これで、加護の印はあと二つ。必然、命の残回数もあと二つだ
「お次は最強の『ヴーアの印』か……これは兄貴に任せるべきかな!」
「ハッ────勘弁!」
壁を蹴り、回り込もうとする黄衣の少女。回り込まれ、進路を断たれては終わりだろう。退路には、あの重火力が待ち受けている筈。
辛うじて先に、裏通りに転がりでた。うらぶれた、普段ならば浮浪者や落第生の溜まり場となる其処。しかし、この空模様ではどちらも、雨に濡れぬ場所に引き揚げているのだろう。幸か不幸か、誰も居はしない。
────もう、無理だろう。逃げられはしない、あんな化物どもか
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