群雄割拠の章
第五話 「わたしは彼と、添い遂げる」
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そして劉備の嬢ちゃんについても、儂は勝手に盾二と結ばれるものだと思っていた。
だから盾二を自分の息子にした上で荊州牧とし、劉備の嬢ちゃんと婚姻させれば万々歳……などと。
勝手な妄想で盛り上がっていたのだと……
そもそも劉備の嬢ちゃんは劉氏。
儂はいつのまにか劉備の嬢ちゃんを、自身の親戚のような気になっていた。
年寄りのおせっかいとして暴走してしまった……ここ一月、そんな考えが儂の心中を駆け巡る。
劉備の嬢ちゃんのことも、そして盾二のことも、勝手な思い込みで……
だがそれでも。
それでも儂は、盾二に多大な期待をしていた。
あやつならば……あやつならば、この女尊男卑の世の中で。
一際輝く天の星として、歴史に名を残すと思っていたのじゃから……
「……景升様」
「むっ?」
ふと、騎乗した状態で物思いに耽っておった儂に、配下の兵から声がかかる。
気がつけば、森の小道の中。
木洩れ陽が眩しい。
「あと数里で梁州の街道に入ります。近くに小川がありますが……一一度休憩いたしませぬか?」
「むっ……そうじゃな。儂も喉が渇いたわい」
やれやれ。
本当に気が滅入っておる。
儂は小川の近くで馬から降りた。
小川のせせらぎに光が反射して眩しく見える。
(嬢ちゃんの状態次第では……本当に三州同盟は解消になる。できればそうはなってくれるなよ……)
劉備の嬢ちゃんとて、その器はまた天下の大器。
盾二という光に隠れていたが、あの嬢ちゃんの徳は高祖に迫るものがある。
だからこそ、盾二の力と嬢ちゃんの徳が合わされば天下無双となるはずじゃ。
(じゃから嬢ちゃんや……儂を失望させんでくれ。盾二に去られた今、儂の希望は……)
そうして水を手で掬おうと小川に手を指し入れ――
ズブッ
不意に……背後で音がする。
背中が熱い。
なにかが……背から腹に……
「グフッ……」
口から何かがこみ上げる。
手に落ちたそれは、戦場でよく見てきた色。
それは――朱。
「なっ………………」
首を少しだけ後ろに向ければ、先程の兵。
その後ろにも剣を抜いた我が配下の兵が――
「……あなたがいけないのです。あなたが、荊州に乱を呼んだ」
「な……に……」
背中から剣が引き抜かれる。
儂は、腹から溢れる血を抑え、小川に倒れこむ。
さほど深くない小川に前のめりに倒れた後、苦しさに仰向けになる。
腹から流れる血は、小川の流れに乗って下流へと朱に染め始めた。
「ぐっ……きさ……まら……な、なぜ……」
「あなたがそれを言いますか。後を継ぐべきお子様をないがしろにし、他人を自分の後継
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