群雄割拠の章
第五話 「わたしは彼と、添い遂げる」
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う国じゃなきゃ、本当の国じゃないわ。わたし達は……それを知っていたはずよ、冥琳」
「………………」
「蓮華を、小蓮を、私の跡を継がせる為に今まで鍛えてきた。今が……その時よ」
「お姉……さま」
「おねえ……ぐずっ……さまぁ……」
お姉様の瞳は、変わらず決意を秘めた眩しいまでの輝きを持っている。
けど、その表情は、本当にすまなそうな……悲しみを湛えているようにも見えた。
「わたしは……本日を持って、貴女にこれを譲ります」
そうしてお姉様が私に差し出した物。
それは――
「……南海覇王」
孫呉の王の象徴にて、母様の形見。
その剣が……私の前に差し出される。
「受け取りなさい、蓮華。これは貴女が受け取るものよ」
お姉様の言葉。
これを受け取ったら、本当に……本当にお姉様はいなくなる。
孫策伯符は……私達の姉は……本当に天の御遣いの元へ行ってしまう。
私はざわめく胸中に戸惑いながら顔をあげ、お姉様を見た。
その顔は――
「……………………」
その顔を、目を見て、不思議と自身の心が落ち着いた。
何故かは……私にもわからない。
ただ気がついた時、私は……南海覇王を、受け取っていた。
その重さを……その身に深く受け止めながら。
そして、お姉様は。
孫呉から姿を消した。
―― 劉表 side ――
あれから一月……儂は梁州へと向かっている。
だが、その足取りは決して軽くはない。
やもすれば……儂は全てを台無しにせざるを得ないかもしれないのだ。
正直、気が滅入る……いや、気が滅入るどころではない。
身を切る思いといっても大げさな話ではないのだ。
それ程に気が重くさせる状況といえる。
そもそも、あの盾二が梁州を出て行ってしまった事自体、その遠因が儂にあると気づいたのだ。
それは、儂が自分の息子達を差し置き、盾二を半分以上本気で養子に仕立てようとしていたこと。
今考えてみれば、なんてうかつなことをしたのだと思わざるをえない。
盾二に惚れ込んでいたのは事実。
本当に儂の後継者にしたかったのも事実。
だが、それを連合の公の場で言ってしまったのがそもそもの間違いだった。
盾二がいなくなってようやく気づいた……あやつに重圧を与えていたのではないかと。
いや、あやつならそんな重圧も厭わず、本当に儂の息子になってくれるかもしれないなどと、ありもしない妄想を本気で信じ込もうとしていた自覚がある。
冷静になって考えてみれば、儂はなんという愚かなことをしたのか……
自ら自分の身内に争いの種をまき散らしていたのだと、今更ながらに悟った
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