群雄割拠の章
第五話 「わたしは彼と、添い遂げる」
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たった一人の男だけを追うのだと。
「お姉、さま……」
「……蓮華。許してくれとは言わないわ。全部、わたしのわがままだもの……ね」
「どうしても……行くのですね」
「ええ。私にはあなた達がいた。冥琳もいた。家族がいた。けど……わたし達を救ってくれたあの人は……盾二は今、たぶん、一人だから……」
梁州という強大な国を作り上げた天の御遣い。
対価も受けず、わたし達のために揚州という念願の地を袁術から取り返した男。
その北郷盾二という男は……孫呉の復活を代償に……私達から大切な姉を奪おうというのか。
「お姉様は、まさか……自らを人身御供にするおつもりですか!?」
「……勘違いしないで、蓮華。盾二は何も求めないわ。コレはわたし自身が決めたことよ。わたし自身が望んで、彼のもとに行く。たとえ彼に拒絶されてもね……」
「そんな……それなら私が! お姉様の代わりに私がこの身を!」
「だから。勘違いしないで、蓮華。わたしは、わたしのために。盾二を本当に愛しているから、誰にも譲りたくないの……例え、あなた達にでも」
「お姉、さま……」
……人を。
人というものは、人を愛することで、人にここまでさせることが出来るというの?
愛とは、一体なんなのか。
私には……わからない、理解できない。
「……ならば、我らは梁州に報復せねばならない」
地の底から聞こえてくるような声。
それが蹲る冥琳の言葉だと、私は直ぐには気づけなかった。
「冥琳……」
「あの男が、私から……蓮華様たちからお前を奪うというなら、梁州の一切を滅ぼして取り返す。それでも……いいのだな」
冥琳の瞳が、暗く鈍く光る。
これが最後通告――そう冥琳の目が語っている。
でも……お姉様の目に宿る、決意の光は――揺るがなかった。
「好きにすればいいわ」
「……っ!」
「梁州にはもう、盾二はいない。いるのは捨てられた女だけ。それで貴女の気が済むなら……勝手にやりなさい。それは梁州と揚州の問題。わたしと盾二の問題では……ないから」
「………………ぐっ」
「そのせいで孫呉の民が傷ついても……孫呉の民から恨まれても、わたしにはもう、関係がないわ」
「!?」
その言葉に、冥琳の目が見開かれ……がくっと肩を落とした。
そう……お姉さまは、本当に全てを捨てたのだ。
「今なら盾二が国を捨てたのもよく分かる……たった一人がいなくなっただけの国なんて脆いもの。本当は、誰か一人いなくなった程度で揺らぐような国を作ってはいけないのよ。それは孫呉も同じ……一人に頼るだけの国になど、ただ一代の夢と変わらないわ」
「ただ一代の……夢」
「跡を託すことが出来る人を育て、脈々と血を受け継がせていく……そうい
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