群雄割拠の章
第五話 「わたしは彼と、添い遂げる」
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ら立てと……突き放した……」
「………………」
「わかってた……わかっていたけど……認めたくなかった……捨てられたくなかった……ぜんぶ、全部私の甘え……」
「………………」
「でも、それじゃあ……あの人に負ける……あの人が盾二さんを……」
寝具を握る、桃香様の手に力がこもる。
「やだ……やだ……やっぱり、やだ……諦めたくない……諦めきれない……盾二さんを……好きだという想いを……こんな想いのままで……」
「………………っ」
この方は……やはり私が認めた方だ。
ドン底まで落ちても、這い上がろうともがく。
全てを諦めようとした私などとは比べ物にならない。
この人だからこそ……私は。
「私ができることは……梁州をまとめること。盾二さんが……いつ戻ってきてもいいように、帰る場所を……護ること。だから……」
桃香様は、その強い眼差しで、私を見る。
ああ、私は、私には。
まだ……この人がいる。
「愛紗ちゃん……ご飯、持ってきて」
「………………はいっ!」
私は涙が溢れた。
―― 孫権 side 漢中近郊 ――
「…………お姉様。今、なんておっしゃいました?」
時刻はすでに夜。
煌々と月の光が照らし出す夜に、お姉さまは漢中から戻ってきた。
梁州の急報に、私とシャオ、そして冥琳を連れ、兵もたった騎馬兵千のみを護衛に幾里も駆け抜けた。
ようやく辿り着いた梁州の街道の安全さに驚きつつ、街道を警備していた梁州兵に取次、お姉さまは一人で漢中へと入っていった。
そしてその夜――皆を集めた月明かりの下で、お姉さまは突然の言葉を吐く。
私は思わず、耳を疑った。
その目の前にいる、我が最愛の姉に再び尋ねた。
「……もう一度言うわ。私を死んだものと思いなさい」
見上げる姉は、厳しい顔のまま、先ほどと同じ言葉を口にした。
その言葉に、よろっと身体が傾ぐのを感じる。
「な、なに、を……」
「お、お姉様!? 一体何を言っているの!?」
私の隣にいた孫尚香――シャオが叫ぶ。
その叫びも当然だ。
シャオが叫ばなければ、私が叫んでいた。
「言ったとおりよ。本日を持って、私は隠居。孫呉におけるすべての権限を蓮華に譲るわ。今後は蓮華を王として孫呉を纏めなさい」
「突然そんなこと言われてもわかんないよ! 一体、何がどうしてそうなるの!? おねえさまは、まだ若くて元気じゃない! せっかく家族揃って母様の夢を叶えたっていうのに!」
そう、そうだ。
孫呉の復活は成り、揚州一帯は私達の手に戻った。
これから街を、民を導いて強い国を作り、家族が笑って暮らせる国を作ると。
その
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