群雄割拠の章
第五話 「わたしは彼と、添い遂げる」
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……場所……」
「ふうん。ほとんど盾二が考えて、その手腕でなければ成し得なかったのに?」
「………………」
「盾二に頼りきり、盾二に任せ、盾二一人に重責を追わせ続けた。それが今の梁州じゃないと?」
「………………」
「そう見えても仕方ないじゃない。だって……盾二がいなくなった今の梁州の惨状を見れば!」
「!?」
劉備の表情が動く。
初めて……この部屋に入って初めて、劉備の死んだ顔に表情が視えた。
「盾二が作り上げたものを、たった数月で壊そうとしている貴女が、一体何を言うの?」
「………………」
「たった一人の天の御遣い……その人が去ったら、その作り上げた都が砂塵のごとく消える。そんな砂上の楼閣にしようとしている貴女が、一体何を言うのかしら?」
「……っ」
それは悔恨。
劉備の表情は、悔しさに満ちたように唇を歪めている。
そしてその眼に、溢れるような涙が流れた。
「……いじけて、力なくして、今度は泣きべそ? こんな甘えん坊に……わたしは盾二を託した覚えはないわ」
「貴女……には、わからない」
劉備が、力の入らない体に力を込め、起き上がろうとする。
生まれたての仔馬が、必死で立ち上がるように……
「面と向かって……さよならと言われた……私の気持ちは……わかるわけがないです!」
「………………」
ええ、そうよ。
「わからないわよ。そんなの……誰もわからないわ」
私は劉備に背を向ける。
「貴女以外……さよならも言ってもらえなかった他の誰にも……わかるわけもない」
「……!」
劉備の身動ぎする音が聞こえる。
「……だからわたしは、追うわよ。さよならを言われていないわたしは」
「………………」
「例え盾二を見つけて……拒絶されてもついていくわ。貴女の代わりにね」
「………………」
「たった一言で、語り尽くしてもいない相手を諦めるほど、わたしの恋心は腐ってないわ」
「えっ……」
そう……わたしは、彼が好き。
どうしようもなく……諦めると誓ったにも拘らず。
貴女が彼を手放すというなら……
「貴女がそうして泣くだけで動かないなら……わたしがもらうわ」
「あ……っ」
「盾二に嫌われても……わたしの想いは変わらないから」
再度、劉備に振り返る。
これは――宣戦布告。
「盾二はわたしがもらうわ。たとえ、わたしの全てを捨ててでも」
今までの孫策伯符は、今日――死んだ。
そして生まれ変わるのよ。
「わたしは彼と、添い遂げる」
そう……わたしは。
今、一人の女として。
全てを投げ打って彼を追うと決めたのだから。
―― 関羽 side ――
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