例えばこんな真実を暴く必要があったのだろうか
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思われたい」
どこか怯えと警戒を抱えた光子に偽らざる本音を告げる。それは叶わなかった嘗ての夢の代理をゴエモンに求めているだけなのかもしれない。それでも、ジェーンはゴエモンの隣にいる心地よさを、もう手放したくないのだ。自分勝手な理由でもいい、一緒にいたい。
「ゴエモンは心の奥底に私に分からない感情をひた隠しにしている。ゴエモンが私を頼ってくれないの理由も原因もそこにあるように思うんです」
真正面から、ジェーンは光子の目を見据えた。
やがて光子はぽつぽつと、まるで懺悔するように語り始めた。
後に夫となった真田詞朗はおっとりとした男性だった。
この頃既に実家から縁を切られてゴエモンを育てるシングルマザーとして働いていた光子は、営業マンだった詞朗と偶然出会い恋に落ちた。彼は光子の事情を全て知った上で結婚を承諾。3人は家庭を築いた。
詞朗は光子と息子になったゴエモンを養うために働き、あまり家庭にいる時間は長くなかった。それでも光子は愛する人と一緒に暮らせて幸せだったし、ゴエモンも詞朗の事を嫌いではなかった。5年という時間をかけて、家族はその絆を深めていった。だが、別れは突然訪れる。
通り魔。顔も知らない、男か女かも知らないその魔手によって、詞朗は帰らぬ人となった。誰かに恨まれるような人間ではない、平凡で優しい人間。そんな彼が前触れもなく失われたとき、光子は半狂乱になって泣き叫んだ。
嘗て、愛した男に逃げられた。ゴエモンという子供だけ残し、当時まだ13歳だった光子を置いて男は逃げ出した。余りにも若すぎる妊娠、そして出産。家柄を気にする親には誰とも知れない男の子を孕んだという理由で縁を切られ、周囲にもはしたない女と蔑まれた。そんな中でも子を守るために必死に生きてきた光子にとって、詞朗は手に入れたたった2つの幸せの片割れだった。その2つの幸せさえあれば、他には何もいらなかったのだ。
なんで、どうしてあの人が殺されなければいけなかったのか。棺桶の中で安らかに眠るその夫の死に、光子の心はおかしくなっていた。
「なんででしょうね。あの人と同じように、ゴエモンも離れて行ってしまうような・・・そんな気がして。あの人と、それに似てきたゴエモンの姿を重ねたのかもしれません」
「似てきた?ゴエモンとですか?」
「夫が死ぬ前から、ゴエモンはよくあの人を真似るというか・・・・・・そういう雰囲気を持っていれば私が喜ぶといったことを、無意識に学んでいたみたいです。あの人に対するあこがれもあったのかもしれません」
夫と肉体的に繋がった回数の少なかった光子は、それさえ夫を失った原因ではないかとさえ考えていた。ショックによって正常な論理立てが出来ていなかったのかもしれないし、そもそも夫とゴエモンを異性として同列に感じていたのかもしれない。そ
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