≪アインクラッド篇≫
プロローグ リセットの享受
プロローグ 郷愁の日々 その壱
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引いたのは≪隠蔽スキル≫だった。周囲に溶け込みモンスターやプレイヤーの視線から逃れることが出来る、という説明の簡素な一文が俺をまたまた魅了した。
想像の中での俺が、隠蔽で隠れて後ろから近づき背後からブスリと敵を倒す。そこまで思って俺は盗賊から暗殺者への転職を決めた。このゲームに職業はないらしいが。まぁ、気持ちの問題だ。
隠蔽スキルを取りステータスも振る。最初に与えられているポイントは15ポイントでそれを筋力と俊敏という二つのステータスに割り振る。
MMORPGとしては異様に種類が少ない。これはSAOがソードスキル主体のゲームという理由だからだ。筋力に6、俊敏に9振る。
「マジでこんなんで変わるんかなぁ………おおっ!」
入力して数秒後、体が軽くなり、左手で弄んでいたジャマダハルも軽くなるのも感じ、気持ち体も逞しくなった気がする。これがステータスによる再現かとそう思った後に、これなしじゃ流石に青イノシシ相手でも梃子摺るよなぁと思う。
ビルド検証のため仕方ないこととはいえ些か時間が勿体無く感じる。
ステータスの割り振りが終わりウインドウを閉じると何処からか、おおっという喚声が聞こえた。見ると喚声を上げた人達は一様に西の空を見ている。
西の方角に在るのは、無限に続く赤く美しい夕暮れと金色に染まる雲の群れ。その光景は架空と言われようと偽者と言われようと、絶対的な美しさを持っていた。
その夕焼けの赤い光が戦士達を照らして長い影を生む。戦士たちは武器を仕舞い、各々が感嘆のポーズでこの光景に向かっている。
岩に腰掛ける俺も頬杖をしながらこの幻想的な光景に魅入っていた。
―――ああ、本当に、出会えて良かった。この素晴らしい世界と。
そして時刻は五時に達する。
この時の俺には分からない事だったが、この日この時より俺の生存の舞台は現実から架空へと移り変わったのだった。
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