第百八十話 天下の宴その一
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第百八十話 天下の宴
信長は宴の用意が出来たことを利休から聞いた、そのうえで満足している笑みでその利休に対して問うた。
「家臣の者達は皆来たな」
「はい」
「竹千代達も来た」
「そして公卿の方々な」
「皇子も来られておるな」
「左様です、ただ」
ここでこうも言った利休だった。
「高田様だけは」
「あの御仁はか」
「急なご病とのことで」
来ていないというのだ。
「公方様は来られましたが」
「むしろわしはな」
義昭の名前を聞いてだ、信長はこう利休に述べた。
「あの方の方がな」
「来られぬとお思いでしたか」
「そうじゃった」
これが彼の読みだった。
「あの方は近頃わしを遠ざけておられる」
「だからですな」
「そう思っておった、しかしな」
「公方様は来られました、ですが」
「高田様はじゃな」
「はい、あの方はです」
「そうか、あの御仁は」
ここでこう言う信長だった、その高田について。
「よく知らぬ」
「その素性がですな」
「うむ、知らぬ」
全く、というのだ。
「どういった方かな」
「高田家は古くかあり」
「そして陰陽道を司っておるな」
「はい、安倍家等と同じく」
そうだというのだ、あの安倍晴明の家と共にだ。
「そうした家です」
「そのことはわしも知っておるが」
「高田殿はですか」
「何も知らぬ」
そうだというのだ。
「どうにもな」
「実はそれがしも」
ここで利休も信長に話した。
「あの方のことは」
「知らぬか」
「朝廷に出入り出来る方ですが」
「それでもな」
「普段何をしておられるのか」
それも、というのだ。
「わかりませぬ」
「誰もがそう言うな」
「林殿もですな」
「新五郎がいつも不思議がっておる」
織田家において朝廷との橋渡し役を主に行っている彼にしてもというのだ。
「あの御仁のことだけは全くわからぬとな」
「そうですな、あの方ですら」
「新五郎がわかぬとは」
織田家において人を見ることにも長けていることで知られている彼ですらというのである。
「相当な方じゃ」
「高田家も確かに陰陽道は司っておられますが」
「それでもな」
「そのはじまりはです」
それは、というのだ。
「知られておりませぬ」
「公卿の家であるのにな」
「大和の出か山城の出かも」
そうしたことも、というのである。
「全くわかりませぬ」
「まさに全くじゃな」
「はい」
「藤原でも橘でもないな」
「物部でも蘇我でも大伴でもなく」
そうした古い家のどちらでもないというのだ。
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