第二十三話 明るい日常その十五
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怪人はその身体が灰になりそうしてだった、その中で消えていった。向日葵は夕闇の中での闘いを無事勝利で終えた。
そうしてだ、見ていた裕香に顔を向けて言った。
「終わったね」
「ええ、よかったわね」
「生き残れてね」
「勝って、じゃないのね」
「勝っても死んだら元も子もないじゃない」
だからだというのだ。
「よく漫画とかで勝負に勝っても、ってあるじゃない」
「ええ、死ぬとかね」
「私まだ生きたいから」
「だからなの」
「そう、生き残れたことをね」
「嬉しいって思うのね」
「本当によかったわ」
その笑顔での言葉だ。
「これでまた楽しく暮らせるわ」
「勝ったことは嬉しくなくて」
「生きられて楽しく暮らせたから」
それでというのだ。
「本当によかったわ」
「そういうことね、それじゃあ」
「うん、これからね」
「帰ろう、あらためて」
「ええと、何のお話してたかしら」
裕香はここで残念そうに言った、闘いを見ていてそのことに集中していてだ、それまで二人で話していたことを忘れてしまったのだ。
「一体」
「あっ、私も」
「向日葵ちゃんもなの」
「忘れちゃった」
ぺろりと舌を出しての言葉だった。
「御免ね」
「ううん、お互い様じゃない」
だからいいとだ、裕香はその向日葵に返した。
「それはね」
「それじゃあ」
「とにかくね」
「帰るのね」
「寮にね」
裕香の帰る場所はそこだった。
「帰るわ」
「寮ねえ」
「寮も快適よ」
「怖い先輩とか先生とかいないのね」
「皆いい人よ」
「下級生は四時半起きとかないのね」
「そうしたことはないわ」
男子寮より女子寮の方が厳しいと言われている、具体的に言えば最上級生である三年生が一番偉いのだ。
「別にね」
「そうなのね」
「そう、平和だから」
至って、というのだ。
「だから安心してね」
「だったらいいけれど」
「四時半起きって向日葵ちゃんのところでしょ」
「お寺だからね」
裕香にも言うのだった、このことを。
「それも普通なの」
「そうなのね」
「寮でもそうじゃないのね」
「六時起床よ、普通に」
「自衛隊みたいね」
「そうそう、うちの学校海軍さんの頃から縁があったから」
それでというのだ。
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