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ソードアート・オンライン 〜深淵の藍〜
第二章 ソロプレイヤー〈ナナシ〉
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そう。と言ってもこれに見合った品を私は持ち合わせていない。不服なら持って帰って競売にかけた方が得だわ」

「面倒だからここで済ませる」

「……解かったわ。それで、何と交換する?」

 そう言われても今欲しい物なんて特には……………あっ!

「防具だ」

「……防具? そう言えば今日はやけに薄着ね」

「耐久値がなくなって壊れた。ここの報酬で新しいのを買うところだったからな」

「……そんな物でいいのなら、これなんてどうかしら?」

 フランがアイテムストレージからオブジェクト化したのは、一着のコート。俺も見た事がない。
 特に目を引くのはその色合いだ。

 それは深い青。吸い込まれそうな程に深い青。不覚にも、見入ってしまった……。

「……アイテム名は《ダークブルー・スカイレイカー》。俊敏性重視の貴方にピッタリの性能よ」

「『夜空を見晴らす者(ダークブルー・スカイレイカー)』……か」

 実際に手に持ってみると直感が確信に変わった。これは気に入った、と。

「交換だ」

「……いいの?」

「あぁ」

 フランがメニュー画面を操作すると、俺の前に小さな画面が展開した。『交換に同意しますか? Yes/No』と表示されたそれに、俺は迷い無く『Yes』を押していた。










「……着心地はどうかしら?」

「悪くない」

 早速コートを装備すると、内心感動している自分がいた。
 ゲーム内で着心地も何もないのだが、何故か落ち着く。


「…………………………(似合っているわ)」

「何か言ったか?」

「……何も言ってない」

「いや、お前。絶対何か言―――」

 そこで言葉を遮ったのは俺の鼻先まで迫った銀色のナイフ、その切先だ。
 向けているのは他でもない店主フランだ。

「……何も言ってないわ。えぇ、何も言ってない。それでも何か聞く?」

「………OK.俺の聞き間違いだ」

「そう」と言ってフランはナイフを収めた。
 言ったような気がしたんだが、空耳か?
 何とも納得がいかないが、これ以上は今後に関わりそうだと無理矢理に自分を納得させた。

「それじゃ、今度こそ行くぞ。またよろしく頼む」

「……こちらこそ」

 素っ気無く見送られ、俺は店を後にした。










『……そうよ。私と彼は顧客(ギブ)と情報屋(テイク)の間柄。それ以上はないわ』

 ワタシはそうやって納得するしかなかった。
 だって彼は、戦いの中に身を置く事しか出来ない不器用な人だから……。

「本当に似合っているわよ。ナナシ……」

 それだけはワタシの素直な気持ち。

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