第二章 ソロプレイヤー〈ナナシ〉
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初心者プレイヤーを含めて二〇〇〇人近い命が散った。
ふと視線をずらせば永遠に広がる墓標。この状況を見越してこのフィールドを創ったのなら、ソイツはイカれてるとしか思えない。天才の肩書きがあるからなお質が悪い。
「……帰るか」
ここでのレベル上げは上々の成果だった。もっとも俺のような無謀なレベル上げのやり方なんざ、常人には理解できないだろう。自分のレベルよりも少しだけ高いフィールドで複数体を同時に相手にするのだ。前の層で会った同業者には「あんた、死にたいのか?」と真剣な顔で言われた。だから俺もいつも通りに言ってやった。
『そうかもな……』
これが俺のやり方、生き方だ。俺は、そのために“ここに来た”…。
―――ピシッ!
そんな事を思い耽っていると小気味良い音が響いた。しかもその音源は俺、厳密には防具たるコートからだ。
「なんd―――」
最後まで言い終わる前にコートが薄い硝子板が壊れるようにデータの破片となって爆散した。
「………」
呆気に取られた俺はそれを見ていることしか出来なかった。
別に大層高い防具でもない。第4層で買った防具を今まで更新もしないで使い続けたせいで耐久値が無くなって消滅したのだ。
頃合かと、納得して俺は転移結晶を使って町へと戻る事にした。レベル上げついでの“依頼”も済んだしな。
戻ったら新しい防具を買わなくては…。
「転移、アイオール!」
第8層の町の名前を発声すると結晶が発動。俺の体は光に包まれ、フィールドから消えた。
第8層・アイオール
この町の特徴と言えば鈍色の大岩を削り出して造られた建物だろう。独特の色合いと幻想的な外観はゲームならではと言ってもいい。
町の転移門広場に戻ってきた俺が最初に向かったのはNPCショップ……ではなく、
「いるか?」
とある雑貨屋。町の裏通りみある小さなプレイヤーショップだ。だがショップとは名ばかりで店の中は閑散としている。
何も商品は物だけではからだ。
「……いるわ」
店のカウンターには店主が静かに佇んでいた。獣皮のローブを着てフードを目深く被った人間。声からして女性プレイヤーだ。
「……依頼の方は?」
「あぁ、これだ」
俺はメニューウィンドウを呼び出し、あるデータを彼女に渡した。
それはさっきまで戦っていた《アンデット・ソルジャー》の固体データだ。
どんなゲームにも存在するモンスター名鑑。彼女はモンスターのステータス、獲得出来る経験値、ドロップアイテム等の情報収集を依頼してくる情報屋だ。基本的にその情報はプレイヤーに売っているのだろう。
「……たしかに依頼は完遂されました
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