第二十三話 明るい日常その十三
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「これは」
「うん、まずいわよね」
「向日葵ちゃんも言うけれど」
「確かにまずいわ」
向日葵もそれは認める、何しろ彼女から攻撃は出来ていないからだ。
「相手が見えないとね」
「向日葵ちゃんは攻撃出来ないから」
「まずいことはまずいわ」
またこう言う向日葵だった。
「相手の場所がわからないから」
「ええ、大丈夫?」
「大丈夫よ」
実にあっさりとした返事だった、向日葵の顔は今でも明るい笑顔だ。
「最後に勝つのは私だから」
「言うわね、私が見えないのに」
「見えないのは確かよ」
怪人がまた言って来たが向日葵の顔色は変わらない。裕香も夕闇が夜になっていく中でその笑顔を観ている。
「相手の場所がわからないとね」
「どうしようもないわね」
「それは確かよ」
「ではどうするのかしら」
「相手の場所がわかればいいのよ」
向日葵は笑顔のまま実にあっさりと言った。
「それならね」
「簡単な理屈ね」
「そうでしょ」
「けれど貴女には私が見えないのよ」
妖怪はまたしてもこのことを強調して言うのだった。
「全くね」
「そうなのよね、今は」
「それでどうして私に勝つのかしら」
「考えはあるから」
これが向日葵の怪人への返答だった。
「私にもね」
「そしてその考えで、というのね」
「そうよ、貴女にも勝つわ」
向日葵は負けていなかった、少なくとも心では。
「これまでの気配と風の動きだけで場所を見極めていたかったけれど今からはね」
「違うというのね」
「そうよ、こうしてね」
向日葵は弓矢を構えたままだった、そしてその矢を。
四方八方に放った、その攻撃は速かったが。
それでもだった、怪人を狙ったものではなかった。己の周りそれも茂みのすぐ前の地面を撃ったものだった。
その攻撃を見てだ、裕香はすぐにはっとして言った。
「そういうことね」
「裕香ちゃんはわかったのね」
「ええ、何となく」
「こうするから」
やはり明るい顔で言う向日葵だった。
「これで勝てるわ」
「向日葵ちゃん考えたわね」
「まあね、さて何時来てもいいわよ」
向日葵は今も姿を見せない怪人にも言った。
「私が勝つ時だから」
「私の姿も見えないのに」
「今はね」
あくまで今は、というのだ。
「確かに見えないわね」
「貴女の置かれている状況は変わらないわ」
「変わらないものはないわよ」
「ないというのね、それは」
「万物は流転するだったわね、学校の授業で習ったけれど」
ギリシアのとある哲学者が言った言葉だ。この世で変わらないものは何一つとして変わらないということである。
「だからこの闘いもよ」
「変わって」
「私が勝つから」
「なら勝ってみせることね」
怪人は絶対の自信を以て
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