龍と覇王は天前にて
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玉座にゆるりと背を持たれ掛けさせて頬杖を突いた。
「続けよ、曹孟徳」
ため息を一つ。劉協はうんざりしたような表情で命じた。
「は。此処で孫策の話に戻します。荊州侵攻から引き返して徐州の戦場に向かい来たならば、劉備軍と相対するは必定。荊州を攻めた事と、孫権に徐州を攻めさせた事を見ても、袁術に反旗を翻すかどうかも不安がありました。
其処で私は陛下を守れる人員を領内に残しつつ、劉備を助ける事にしたのです。徐州で相対するのが我が軍だけであれば、孫策は必ず盟を守ってくれるだろう、そう信じて。
劉備を益州に向かわせたのは孫策、劉備両方からいらぬ嫌疑を掛けられぬようにする為。劉備軍が軍師の二人、諸葛亮と鳳統は荊州の水鏡塾出身、と言えばご理解頂けるかと」
ふっと息を漏らし、頭を俯けたと同時に、華琳は劉表と一寸目が合った。
其処には楽しげな色が揺れていた。遊び相手を見つけた子供のような、そんな輝きを映した目。
――徐庶の事は知っている。雛里が手紙を貰っていた事も聞いている。だから……あなたは私を手伝わなければならない、そうでしょう? 劉表。
「確かに、我が部下にも水鏡塾出身のモノは幾人かおり、特に徐元直は諸葛亮と鳳統に近しかったと聞いておりました。孫策と密に盟を結んでいる、などと零してしまえば、劉備軍は疑念猜疑心に捉われ曹操殿に反発していたやもしれませんし、劉備軍を残せば、孫策達は我が領地に攻め入った事に対する報復を恐れて、盟自体が破られていたやもしれません」
劉備も孫策もそんな薄い器ではないが、とは二人も言わない。
言わずとも、特に袁家に従っていた雪蓮達は疑われても仕方ない。本人が如何に王足り得ていようと、過去に辿った道筋と目の前に浮き上がっている事実を、人は見る。信じる事は、かくも難しい。
「御口添え感謝致す、劉表殿。
よって、劉備を益州に逃がす事を最善と判断致しました。その後の動きは報告の書簡の通りに」
後は各々に思考を任せるだけだ……と、二人は黙った。
互いに合わせれば理論は固まる。掛け合い出来上がったこの嘘は固い。
――別に、あなただけが嘘つきなわけじゃないのよ、徐晃。状況を利用して捻じ曲げるのも、事実と結果を以って有利を得るのも、王ならば当然しなければならない。その意味では、あなたは私と同類なんでしょうね。欲しいモノの為なら、狡猾にも、残酷にもなれるし、嘘を貫けもするのだから。
ウソをつくコツは、真実を潜ませる事。思考誘導のコツは、情報を制限して相手に思考させ、曲解させる事。
反対意見を上げられる孫策は此処には居ない。後々ならば一勢力よりも二勢力の言が優先されるだろう。数は有利に立てる力。
此処からどうするんだ、などと劉表は考えない。この流れならば、華琳には
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