龍と覇王は天前にて
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血族であっても悪政を働いていると噂される劉璋の行いを確かめに行こうとしていたのです」
「なっ」
「……なんじゃと?」
思わず声を発してしまったモノは多い。帝の自分を作っていた劉協でさえ、余りの衝撃から身を乗り出して尋ねてしまった。
切り札は一つでは無い。華琳の手元には、徐公明と鳳士元が居る。劉備軍に所属していた二人が何よりの証人となる。例え華琳がその後の本格的な交渉で対価を変えていようとも言い分が立てられる。
先だって責務を軽んじたのは劉備であると明らかにしてしまえば、華琳が有利な形成は動かない。
――帝の意味を保ちつつ、先に劉備の“為政者として”の評価を下げながらも蜀の地を任させる……その手があったか。
帝から劉備に対する心象の操作を行えるのは、何も劉表だけでは無い。
確たる証拠……結果が出てしまっている以上は、華琳の手の方が強く、信憑性があるのだ。
史実の長きに渡る乱世の凄惨に染まった時代ならまだしも、早回しのように進んで行くこの世界で任地を自ら捨てる行いがどういう事を齎すか。
群雄割拠と言っても余りに早過ぎた。一年も経たずして放棄すれば、上の者達が向ける為政者としての信用は……ガタ落ちする。
ざわつく場内にて、上げられる声は不快気なモノが多い。この場に訪れた二人の為政者は、与えられた任地をしっかりと守っていたのだから余計に見劣りしてしまう。
「賢龍とまで称される劉表殿ならば、劉璋がどのような政事を行っているか知っているのではないでしょうか?」
ふい、と話しの先を向けた。第三者の意見を挟めば論はほぼ固め尽くせる。
文官も、劉協も、華琳も、頭を垂れている劉表を見据える。
自分に話を向けられた事で、劉表は華琳の思惑に気付いてしまった。
――キヒ、オレに合わせろってか。徐庶は鳳統と諸葛亮に手紙を送っちまったから……乗らないとこっちが終わっちまうなぁ。
作ろうとしている漢の忠臣の立場と、劉備達に残っている生命線は、手紙一枚の話を持ち出されただけでひっくり返りかねない。
化けの皮を剥がされたくなければ、掻き混ぜようとした状況を華琳にとっての最善に持って行け……と、脅しを仕掛けられていた。
中々、やる。駆け引きの楽しさから、劉表は口に浮かびそうになる笑みを抑えて、代わりに口を開く。
「……劉璋は蜀の地を乱し、我が領内にまでその影響が大きく出ております。難民の数は日増しに増えるばかりか、餌を求める賊徒も流れ込み、頭痛の種でございました。
劉の名を貶める、即ち陛下の名を貶めるに等しい同族を許さぬ劉備の決断、為政者としては些か未熟が伺えますが、劉備もまた、漢の臣たるを示していると言えましょう」
自分も間接的に助けられている、と案に潜ませる劉表の言に、劉協はまた、
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