龍と覇王は天前にて
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の場で誰が有利かを決める波紋となる。
礼を一つ。獰猛に輝いた華琳の瞳を、劉表はその俯けた横顔に見た。
「両袁家の分裂が行われた際、大陸が乱れ兼ねないと判断した私は、袁紹軍侵攻に対する防衛策を進めると同時に、袁術に悟られる事無く孫策と盟を結ぶ事に成功しておりました。
黒麒麟、劉玄徳と並んで大徳との呼び声高き孫策は揚州の地が荒れている事に憂いている……そう耳に挟んだ為に。しかし……」
区切られた一拍は人を惹き込む。
孫策が袁術に反旗を翻した事はその密盟と繋がっていたのか、と皆の頭に強制的に刻み込ませ、話の続きを求めさせた。
「袁紹が幽州に侵攻したと報せが入り、孫策が……」
再び言葉を切り、チラ、と劉表に視線を向ける華琳。
どうせお前はそれも分かっていただろうに……内心で毒づき、劉表は歯を噛みしめた。
事実確認の有無は当事者にしか出来ない。現代のように証拠を容易く見つける事は出来ないのだ。
「“袁術に命じられて”荊州に侵攻の準備を整えておりました。
その時分の袁紹軍は今よりもさらに大軍。相対するには兵の大半を動かさなければならず、幽州の救援に向かえば、陛下の膝元たる洛陽が手薄になります。軍を率いて徐州に向かった際にどういった事が起こったかを思い出して頂ければ、私が動く事によって危うい事態となったこと、ご理解頂けるかと」
思い出されるは黒山賊の侵攻と劉表の部下の暴走。荊州を攻めた孫策ならば、華琳の領内に攻め入ってもなんら不思議では無いとも同時に含ませて。
起こった事実を引っくり返し、そっくりそのまま利用した。自分はそれを予測していて、帝を守るためには動けなかったのだと……思考誘導を仕掛けた。孫策軍が荊州に攻め込んだ事も、それぞれに納得の行く理由付けを強いてもいる。
密盟を結んでいた華琳を頼らず、漢の臣たる劉表の領地を、逆臣に命じられるがままに攻めた。
何故、侵攻する前に反旗を翻さなかった? その理由を皆が欲するのは自明の理。
「孫家の次女、孫権が徐州を攻めんとする動きがあるとも聞き及んでおりました。そのような状況で、盟を結んでいたとはいえ、何を信じればよいのでしょうか?」
曹操軍は動かなかったという結果と、曹操軍が動いた時に領内に侵攻があったという事実があれば、帝を守る事を優先して正解だったと皆は思うであろう。それもまた、漢の臣の在り方だ、と。
公孫賛との密盟を断った事を知っている。
荊州侵攻を強いられる事を予測していた。
劉備を餌にする事を提案してきたのだ。
後日此処に来るであろう孫策達がそれらを発言しても、反旗を翻さずに荊州と徐州を攻めたという過去は変わらない。華琳を陥れようとしている、と誰の目にも映る。
口約束とはそういうモノだ。証拠が無い。
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