龍と覇王は天前にて
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しい。劉協にも情報は入っていて当たり前。心に溜まる澱みは、華琳の発言によって、大部分がその一所に向けられる。
耳が痛くなる静けさが謁見の間を支配し、訝しげな視線で華琳を見る者と、劉協の答えを待つ者とに二分された。
答えを返される前に、華琳はさらに続ける。彼女はまだ、返答を求めていたわけでは無かった。
「当然、泰平の世を乱す輩は臣が十全の力を以って断ずるべきであり、それこそが陛下から与えて頂いた責務」
仰々しい声音で零された言は、厳しさを伴って場を打った。同意を示し、文官の誰しもが頷く。
――お前は……何をするつもりなんだ……?
劉表の思考は華琳の話の真意を理解出来ず。これから先、侵略を行って世を乱すお前自身がそれを言うのか、と。
「しかし……幽州は脅かされ、徐州は陛下より任を賜られた劉玄徳が放棄せざるを得なくなる始末、力及ばず、未だ逆臣を断ずるには至っておりません。
故に、ここにその不足を謝罪致します」
すっと頭を下げた華琳は、劉備軍との交渉が行われた事を話そうともしなかった。取り逃がしたのは自身の不足だと言い切った。
――おい、曹操。お前は何を狙ってる……なんで……助力を求めてやがる。
劉表にはそう聞こえた。否、話を聞いている誰しもが、そう受け取るだろう。
このままでは対袁家連合が発足しようかという流れになってしまう。それは望む展開では無いはずであろうに、と劉表の頭は疑問だらけになった。
公孫賛を保護した劉備が得をする流れにもなっているから余計に頭が混乱する。
帝のみが言葉を零せるその場で、回り続ける思考の中から、劉表は一つ引っかかりを覚えた。
――助力を請う為に曹操がわざわざ自分の非を話すか? いや、言うわけが無い。こいつの手札は何が……
一つ一つと数えて行く。そうして、思い至る道筋は、確かにあった。
――クソガキめ……そういう事か。
気付いても遅い。既に賽は投げられた。
この話を出せば、帝が尋ねなければならない事が出来てしまうのだ。
「ならば問う。劉玄徳は何故、公孫賛を連れて益州へ渡ったのじゃ? 徐州で諍いがあった事は耳に入っておる。任じた地で起こったならば、そなたと彼の者達で逆臣を討つは当然の帰結であろうに」
「それをご説明するには孫家も絡んで参りますが……」
「ふむ……詳しく申せ。多少長くなろうと構わん」
やはり……と、内心で劉表は舌打ちを一つ。
他勢力には徐州での戦の内情がはっきりと分からない。袁家の分裂、袁紹軍の参入、劉備軍と曹操軍の交渉、孫策軍の裏切り……それらを解き明かせるのは華琳しか居ない。伏していた劉表とは手札の枚数が違い過ぎた。
そして何より……此処に居ない孫策軍の取った二つの行動が、こ
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