龍と覇王は天前にて
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れは自分への嘲笑。
――私でさえも“固定概念”に影響されていたというのに……愚かしい。
女尊男卑の傾向は根強い。徐公明と出会わなければ、男への偏見を持ち続けていたやもしれない……そう考えて。
今は違う。年性別の隔て無く、才あるをこよなく愛し、才無きを引き上げる自分であれと意識を改めている。有能を愛し、無能を憎む、それがこそが自分自身である、と。
からからと笑う声が耳に響いた気がして苛立ちも少し湧くが、視界を広げてくれた事には感謝していた。
先帝への黙祷を……途中に発された劉表の声で、華琳は目を瞑る。
思考を一つに。死者に向き合う時は、華琳の心もそれ一つに向く。礼を向けない事は無い。如何に遊戯の駒の如く命を扱おうと、人としてそれだけは踏み外せない。そうして……自身が心の内に決めた約を一つ交わす。
悲哀溢るる静寂の後に、雪のように冷たい声が響いた。
「そなたの追悼、確かに受けた。漢の臣たるを示すそなたの心、先帝まで届いたであろうな。
して……互いに諍いがあったようじゃが、共に来ておるならば片付けたということか」
名を呼ばず、目線だけで話の先を華琳に向けた劉協は、またアイスブルーを穿った。
「は。劉州牧は陛下への忠を示す為に、逆臣の一族郎党首を刎ね、此処に身を以って証明してきた次第に」
他の事は言わず、劉表と共に来た事で終わった話だと言外に伝えた。
華琳にも劉表にも、此処で劉gの話を出す旨みは無い。
思い描く乱世の派閥絵図の完成には敵対者が必須であり、劉gの不足によって起こった事だと言ってしまっては、現在の劉備軍を圧倒的な不利に追い込まざるを得なくなる。
華琳は迅速で強固な“自身による乱世の終結”の為に、桃香の益州平定を邪魔したくない。
劉表は漢の再興の為に、娘を受け入れた桃香の邪魔をしたくない。
互いに利が一致していると分かっているからぼかす事にしたのだ。
詳細を教えろ……とは劉協も言わなかった。しかしまた、劉協の目が細まった。
「恥ずかしながら漢を騒がせた事、深く、深く謝罪致しまする」
静寂を嫌うかのように、劉表がまた頭を下げた。劉協の視線が其方に向く。
――次の主導権を握りにきたか。助け舟、とは思っていないわよ、劉表。
内心で呟くと、緩く吐き出す吐息が聴こえた。隣の女の空気が、がらりと変わる。
これから自分に有利な方向へと話を進めるのだろう。しかし見誤っている……と華琳は頭を俯けたまま、微笑んでいた。
「……ならばよい。漢の為に、これからもよく励め」
「陛下。謝罪せねばならない事があり、申し上げたく」
劉協の言葉が終わった途端に、凛……と鈴が鳴るような声を響かせる。
話終わりには間を挟むのが礼儀であろう。だというの
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