21:天使の寝顔
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そう言って、きっちりとトリを締めくくる。
「あなた達…………ふふっ、そうね……」
マーブルは指で浮かびかけの涙を拭い、ついでに服の袖で眠るユミルの目の雫を拭き取った。
湿っぽい空気が苦手なのか、なおも場を明るくしたいらしいリズベットが、ニヤリとさせた口に手を当てながら言う。
「その時は、マーブルさん……もうこの際、ユミルくんと結婚でもしてみたらどうです〜?」
「えっ? な、なによ突然〜?」
突然の提案に、さしものマーブルも流石にキョトンとする。
「ユミルくんならきっとオーケーしてくれますよ、マーブルさん超美人ですし。それに、そうしたらあのナンパ男みたいな連中からも絡まれずに済みますよ? どうです、年下の彼氏のカップルってのは?」
「…………うふふふっ、リズちゃんったら、すごい事考えるわね。うん……そうねぇ」
マーブルは膝の上のお婿候補を見下ろしている。髪を撫でている手が止まり、今度は柔らかそうな頬を指先で玩ぶように撫で始めた。すると一瞬ピクッ、と頬をヒクつかせて、むにゃ……と可愛らしい寝言を漏らしたユミルに、彼女はさらに笑みを深くした。
「――私は……この子のこと、好きよ」
そして出た、どこか艶を帯びた声を聞いた途端、女性陣から黄色い声が上がる。
「ってことは……!?」
「でもダメ。残念でした♪」
だがマーブルはカラッと何事もなかった風に、手を金の髪を梳かす仕事に戻らせた。
「好きっていっても、その意味が違いまーす。それに……なにより、私はこの世界じゃ誰とも結婚しないと、最初から決めてるのよ」
「へぇ……理由を聞いてもいいですか?」
興味深そうにリズベットが問うと……何を思ったか、マーブルは両手を頬に当て、やんやんと気恥ずかしそうに身じろぎした。
「決まってるじゃない。だって私――……現実で、既に結婚しているもの……♪」
「「「……………!!」」」
一斉にこちらの女性陣の目が光り、尊敬の眼差しが送られる。
「私は今だって変わらずあの人を愛してる。あの人に身も心も捧げてるの……だから、この左手の薬指も、あの人だけのものなのよ……」
彼女らは揃って、おぉ……! と声を上げながら拍手を送り、
「あっ、でも……私達、まだ子供は作ってなかったんだけど、そうね……この子、ユミルみたいな子供が欲しいなぁ〜……」
そして頬を真っ赤にして「キャーッ!」と耽溺する高い声を合唱コーラスで叫んでいた。
なんだこれは……。
その後は二人の馴れ初めから始まる、マーブルの恋愛トークにフェードインし、この中で唯一、なんとも華やかな空気に馴染めなかった俺は、いそいそと食器を片付
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