第十三話 幼児期L
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最初は焦ったが、少なくともアルヴィンが危険なことをしている事はなさそうだと思い直す。もし勝手にアルヴィンが行動しているなら、コーラルが必ずプレシアに知らせているはずだからだ。
『ますたーなら、ベランダにおられるようですよ。ちょっと眠れないから、風に当たって来るとのことです』
「1人で?」
『はい。1人がいいと言われました』
声のトーンから、ちょっと落ち込んでいるようにも感じた。それでも、律義にこうして部屋で待っているあたり、この子らしいともプレシアは思う。今の彼女のように、風邪をひかないか等心配しているのかもしれない。
「それじゃあ、私も行かない方がいいかしら。アルヴィンなら自分で戻ってくるでしょうし」
そこにあるのは、信頼だった。何をしでかすかわからない子だが、しでかすにしてもなんだかんだと1本筋は通っている。それにあの子なら、体調管理もしっかりできるだろう。そう判断してプレシアは口にしたが、コーラルはその答えにしばし沈黙した。
『……いえ。よろしければ、ますたーの様子を見に行ってあげて下さい』
返ってきた答えは、プレシアの言葉とは真逆のものだった。
「1人がいいってアルヴィンは言ったのよね?」
『はい、確かに。でもマイスターなら大丈夫だと思います』
「あなたは行かないの?」
『僕じゃ……たぶん駄目です。傍にはいれても、それだけですから。適材適所というものですよ』
会話が少し噛みあわないことに、プレシアは訝しげにコーラルを見る。リニスのおもちゃになってどっか壊れた? とすごく失礼なことを考えてしまった。そんな風に思われているとも知らず、コーラルはそれ以上何かを言うつもりはないのか静かになった。
プレシアはそれに肩を竦めると、ベットから立ち上がる。コーラルの態度はよくわからないが、アルヴィンが気になるのも事実だ。少しだけ様子を見に行こうと思ったのだ。
眠っているアリシアとリニスを起こさないように、プレシアは寝室の扉に向かい足を踏み出す。電気を付けると起こしてしまうかもしれないため、足元に注意しながらリビングへと移動した。
「……かってたんだよ、こんなの」
「アルヴィン?」
コーラルの言うとおり、アルヴィンはベランダに座っていた。その傍には寝室のランプも置いてある。窓に背中を預けているため、こちらから顔はうかがえない。プレシアは真っ直ぐにアルヴィンのもとへと歩んだ。
早く寝なくちゃだめよ、と簡単に声をかけるだけのつもりだった。だが、プレシアは言葉を発するのをやめる。淡いランプの光がアルヴィンを照らしているが、その性かどこかおぼろげで寂しそうに映る。それがまるで、迷子になってどこか泣き出しそうな幼子のようにも映った。
「アルヴィン」
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