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トワノクウ
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第十六夜 かけがえのあるもの(一)
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よ。どうせ目覚めない。何もしなければこれからもずっとね」
「ずっと……?」
「かれこれ一年間もこのままだ」
「一年!?」

 自分で上げた大声にくうは慌てて口を手で塞ぐも、本当に青年が目覚める様子はない。

「どうしてお目覚めにならないんですか?」
「それは俺達が着替え終わってから。ここで待っているように」
「……はい」

 梵天と空五倍子が出て行き、残されたくうは改めて青年を見下ろす。
 きれいなひとだと思った。梵天に感じたもの、朽葉に感じたものとは異なる。人間とは、いや、妖である梵天とさえ違った温度を持っているような。
 くうは飽きずに青年を見つめ続けた。


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