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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百六十四話  憂鬱
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の考えは?』
「私もそう思います」
総参謀長が苦しげな表情をしている。二正面作戦を強要される、そう考えているのかもしれない。政府の方針を私も聞いていないわけではない。

「アルテミスの首飾りの件、市民に公表すべきではないでしょうか」
私が提案すると総参謀長が微かに頷いた。アルテミスの首飾りは役に立たない、帝国内ではヴァレンシュタイン元帥により何の効果も無く破壊されている。一度最高評議会内部で討議されたが防衛体制が整わない今、公表すれば市民はパニックを引き起こしかねないと却下されたらしい。

『アイランズ国防委員長に相談してみよう。委員長は戦争が始まればイゼルローン、フェザーン両回廊で膠着状態に持ち込む事で和平をと考えている。帝国がもたついている時こそ和平のチャンスだがそれを理解しようとしない人間も出るだろう、特に議会とかね。自分は安全な場所にいると思って無責任な事を言い出しかねない。アルテミスの首飾りが役に立たないと分かればそういう人間も少しは考えるだろう』
総参謀長の口元が僅かに歪んだ。

『これから防衛計画を策定しなければならない。貴官にも参加してもらう、宜しく頼むよ』
「承知しました」
何も映さなくなったスクリーンを見て思った。二正面作戦、少ない兵力をさらに分割する事になる。膠着状態を狙うと言うが危険ではないのか。失敗したら各個撃破されることになる……。兵力を有効に使うのなら帝国軍を同盟領奥深くへ誘い込み全兵力を以って決戦という考え方も有るだろう。

問題はイゼルローン要塞、フェザーンを放棄するという事が如何いう影響をもたらすかだな。それを同盟市民が受け入れられるか、政府が混乱を抑えられるか……。しかし膠着状態にして和平を結んでも状況からしてイゼルローン要塞、フェザーンの帝国への返還は免れない、となれば放棄しても問題は無いとも言えるが……。



帝国暦 489年 8月 5日  オーディン ミュッケンベルガー邸  ユスティーナ・ヴァレンシュタイン



リビングでお茶の用意をしていると夫が不思議そうな表情をした。カップが二つしか出ていない事に気付いたのだろう。
「ユスティーナ、義父上は書斎かな」
「いいえ、先程在郷軍人会へお出かけになりましたわ。何か御用ですの」
「いや、そうじゃない。カップが二つしか出ていないから如何したのかと思ってね」

「たまの休みだから二人でゆっくり過ごしなさいと仰られて……。気を使って下されたのです」
夫がちょっと困ったような表情を見せた。だから反対したのに……。
「そんな事はしなくて良いのに……。ユスティーナ、義父上に遠慮は止めて欲しいと伝えてくれないかな」

「私も言ったのですけれど……」
「駄目だったか」
「はい、貴方から仰って頂けませんか」
「一度言
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