暁 〜小説投稿サイト〜
戦国異伝
第百七十九話 集まる者達その十二
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「あの将軍がです」
「兵を起こします」
「天海様、崇伝様の働きかけで」
「遂に」
「そうか、幕府もか」
「その時になればです」
「都でも動きがあります」
「ですから殿も」
 松永もだというのだ。
「その時になればです」
「動きましょう」
「必ず」
「まあ動くべきと思った時にはな」
 松永ははっきりとは答えなかった、今も。
「動くとしよう」
「あの、ですから」
「何故そこではっきりと言われないのですか?」
 家臣達はその彼に怪訝な顔になって返した。
「最早時は来ています」
「東西、そして都でも一斉に動くのです」
「それならば中でもです」
「動くべきです」
 織田家のその中でもだというのだ。
「外からも中からも動けば」
「如何に織田信長とて、です」
「倒せます」
「あの者であっても」
「そうなるかのう」
 松永は家臣達のその言葉にも煮え切らない感じで返す。あくまではっきりと答えようとはしなかった。
「殿でも」
「左様です、間違いなく」
「だからです」
「ここは何としましても」
「間もなく我等も兵を挙げましょう」
「大和において」
「まあそうじゃな」
 ここでもこう言うだけの松永だった、そうしてだった。
 家臣達にだ、こうも言ったのだった。
「今はな」
「宴に出ますか」
「あの忌まわしい青い衣を着て」
「そのうえであの身の毛のよだつ天主に入り」
「そのうえで」
「そうするとしようぞ」
 こう彼等に言うのだった。
「ではよいな」
「仕方ありませぬな」
「我等も形は織田家の家臣です」
「そうですから」
「今は」
「うむ、行くぞ」
 家臣達は実際に忌まわしい顔になっている、だが松永は違っていた。彼だけは楽しそうな顔になっている。
 それでだ、青の衣と冠織田家のそれを身に着けて言うのだった。
「殿のところに参上するぞ」
「仕方ありませんな」
「それでは」
「うむ、行くぞ」
 こう話してだった、彼等は行くのだった。確かに不満そうではあったが。
 松永はその安土城に入り天主に向かいながらだ、家臣達に言うのだった。
「心地よいのう」
「この忌まわしい城の中にあっても」
「それでもですな」
「殿ならば」
「うむ、心地よいわ」
 実際にそうだというのだ。
「実には」
「それは殿だからです」
「殿お力ならです」
「例えこれだけの結界の中にあっても」
「全く動じられないでしょう」
「跳ね返して」
「わしの力は大したことはない」
 だが松永はこう言うのだった。
「全くな」
「いえ、それは違いましょう」
「我等よりも遥かにです」
「殿のお力は強いですから」
「それは」
「そう思うならいいがな。ふむ」
 今度は己の青い服を見て言った。

[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ