第二十三話 明るい日常その十一
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「私もこの目で見たことはないわ」
「奈良県にはいないの」
「いてもおかしくないわね」
裕香は指を傾げさせつつ言った。脳裏に故郷の周りを思い出しながら。
「正直なところ」
「山ばかりだから」
「そう、私達が行ける範囲なんてちょっとだったし」
裕香の村の人達のテリトリーはというのだ。
「本当にね」
「少しだけなの」
「山の中でね」
「それで殆どの山がなのね」
「誰も入っていないから」
裕香の村の人達は、というのだ。
「そうした山にはまだね」
「山窩の人達がいてもおかしくないのね」
「本当に奈良県って凄いのよ、山が」
「物凄く多いのね」
「どの山も木が一杯で」
その見渡す限りの山達がというのだ。裕香はその故郷の山のことから向日葵に山窩のことを話していくのだった。
「何処に何があるのかわからない位なのよ」
「そうした場所だから」
「そう、山窩の人がいてもね」
「不思議じゃないのね」
「わかってることなんて少しだから」
この世で、というのだ。
「日本でもまだまだわかってないこと多いと思うわ」
「ううん、山窩ねえ」
「高校に入って先生から縄文人じゃないかとも言われてるって教えてもらtったわ。山姥のモデルだったとかも」
「ああ、あの人を取って食べる」
山に一人で住んでいるという老婆の妖怪だ、姥捨て山での話ではないかという説もある。
「金太郎も育てたのよね」
「その妖怪もね」
「実は山窩だったんじゃないかって言われてるのね」
「そうなの」
「奈良県の山ってそこまで深いのね」
「だから戻るのにも一苦労なのよ」
無論生きることもだ、日本にもまだそうした場所があるのだ。
「私もう神戸か大阪で暮らしていきたいわ」
「村には戻らずに」
「ええ、ずっとね。ただ山窩の人はね」
「その人達は?」
「若し実際にまだおられるのなら」
彼等が山窩としてまだ暮らしているのならというのだ。
「お会いしたいわね」
「そう考えてるのね」
「そうなの」
こう裕香に言うのだった、そして話が一段落したところでだった。
ふとだった、向日葵は足を止めてだった。裕香ににこりとしたままだったがそれでもこう言うのだった。
「ちょっとね」
「まさか」
「そう、そのまさかよ」
気配を探りつつの言葉だった。
「来たみたいよ」
「そうなのね」
「裕香ちゃんは安全な場所に移って」
そしてそこでだというのだ。
「じっとしててね」
「それじゃあ」
「はじめるのよね」
向日葵は両手に弓矢を出しつつまだ姿を見せていない相手に問うた。
「そうよね」
「そうよ」
女の声だった、四十代位の。しかし姿は見せない。
「これからね」
「やっぱりね、けれど」
「姿を見せないっていうのね」
「
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