第二十三話 明るい日常その十
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「それだけでもかなりの時間がかかるのに」
「バスもないの」
「そう、ないの」
村までのそこもだというのだ。
「昔からね」
「それでやっとなのね」
「村に帰ることが出来るの」
「何か関西じゃないみたいね」
向日葵はここまで聞いて述べた。
「本当にね、ただ」
「ただ?」
「ちょっと裕香ちゃんのその村のこと聞かせてくれる?」
興味を持ってそれで問うたのである。
「もっとね」
「聞きたいの?村のこと」
「ええ、平家の隠れ里よね」
「そう、いいかしら」
「別にいいけれど」
こう答えはしてもだ、裕香はややきょとんとした顔で首を傾げさせつつその向日葵に対してこうも言った。
「何もない村よ」
「けれど隠れ里よね」
「平家のね」
「私実は軍記ものとか興味あって」
「それでなの」
「平家の隠れ里とかのお話もね」
壇ノ浦で敗れ落ち延びていった彼等のだ。彼等は各地に落ち延びそのうえで隠れ住んでいたのである。
「聞きたいし知りたいから」
「それでなのね」
「そうなの、だから裕香ちゃんさえよかったら」
「私は別にね」
いいと返す裕香だった。
「不便だとは思ってるし帰るつもりもないけれど」
「お話出来るのね」
「ええ、恥ずかしくもないから」
そうした感情はなかった、故郷に。
「凄い場所だけれど」
「それじゃあね」
「テレビもあって」
それにだった。
「中学校までもあるから」
「そうなのね」
「高校はね」
ここからだった、問題は。
「苦労して行かないといけなかったけれど」
「同じ奈良県の高校でも?」
「そうなの、就職もね」
「村だと就職は」
「農家とか木樵さんとかね」
そうしたものだった。
「村役場はあるけれど」
「それ以外がないから」
「そうなの、人は出て行くだけだったわ」
「裕香ちゃんみたいに」
「本当に過疎地だから、それで」
「それで?」
「昔山窩の人がいたとか」
裕香はここで今も尚いるというその人達の話をした。
「鬼とか土蜘蛛の話の基にもなってる人達とか」
「山窩って?」
「このことも聞きたいの?」
「ちょっとね、よかったら」
こうした話にもなった、そしてだった。
裕香は向日葵にその山窩という人のことを話そうとしたがここで昼休みが終わった、続きは放課後ということになった、そうして。
部活が終わりだ、その後で。
向日葵は裕香と待ち合わせてだ、そのうえで寮までの帰り道に裕香から彼女の村のことと山窩の話を聞いた。
そのうえでだ、こう言うのだった。
「そうした人達もおられたのね」
「まだおられるらしいわよ」
山窩は、というのだ。
「どうやらね」
「そうなの」
「マスコミの取材は受けないとかいう話よ」
「それで誰に
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