第二十三話 明るい日常その八
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「まだ食べるのよ」
「そうだったの」
「そう、お弁当はお肉でもね」
本当の話である、恐ろしいことに。
「食べるし、雑誌とか捨てても」
「食べるのね」
「食べものは奪ってでも手に入れるから」
「それどんな強盗?」
「強盗は捕まるけれど鹿は捕まらないわよ」
警察は人間だけを対象にしている組織だ、如何に奈良県といえど奈良県警も鹿を捕まえられる筈がない。
「絶対にね」
「何をしてもなの」
「それでちょっとからかうと」
鹿達はどうしてくるかというと。
「隙を見せたらね」
「その時になの」
「仕返ししてくるのよ」
「頭いいのね」
「悪い意味でね」
裕香は奈良県民として事実を語るのだった。
「屈んだり後ろを見せたらね」
「やり返してくるのね」
「頭突きとかでね」
そうしてくるというのだ。
「だから油断出来ないのよ」
「ううん、そうなのね」
「観光地だから人間に慣れてるしおまけに神様の使いだから」
つまり神獣である、奈良の然達は。
「大事にされてるというか甘やかされてるから」
「余計に態度大きいのね」
「そうした要素が重なってね」
「奈良の人達は、なのね」
「あそこの鹿好きじゃないのよ」
「そうした理由があったの」
「可愛いと思ってる人はいないわ」
こうまで言う裕香だった。
「まあ私も奈良公園は数える位しか行ってないけれどね」
「裕香ちゃんのお家は奈良の南の方だったわね」
菫が裕香にこのことを尋ねた。
「ご実家は」
「そう、平家の隠れ里だっていう話もある位ね」
「山の奥にあって」
「物凄い田舎だったから」
「奈良県でもなのね」
「奈良で開けているのは北の方だけよ」
奈良市等である。
「精々桜井とか宇陀までで。御所とか王子も結構だけれど」
「南の方は、なのね」
「吉野とか十津川もね」
そうした場所になると、というのだ。
「もう秘境だから」
「山が多くて」
「もう山が見渡すばかり連なってるから」
緑の山達がだ、まさに何処までも続いているのが奈良の南だ。それこそ天狗でも狼でもいてもおかしくはない程だ。
「凄いわよ」
「それで裕香ちゃんは」
「ずっといたのよ、そこにね」
「中学校を卒業するまでは」
「もう帰るのも一苦労だから」
「それで夏休みとかもなんだな」
同じ寮生である薊が言う。
「実家に帰らないんだな」
「家族がいるけれどね」
それでもだというのだ。
「あんまりにも遠くて」
「しかも、なんだな」
「不便だから」
「水道とかガスはあるよな」
「あるけれどね」
そうしたものは、というのだ。
「一応よ」
「一応なんだな」
「そう、かなりの僻地だから」
「日本にまだそんな場所あるんだな」
「あるのよ、それが」
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ