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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル
第24話-2 『美月芳夏』
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ホタルに、怒りが更に膨れ上がる。肩を掴んだ手に力を込めて、

「──そんなにあの女が大事か」

 その瞬間、掴みかかっていた手にバリっと強烈な痛みが走って。
静電気を十倍かにでもしたかのような激しさで、バチン!  と手が弾かれた。

「づっっ! ぐ……!!」

 ビリビリと痛みに震え続ける両手を見下ろしていると、ホタルの冷えきった声が降り掛かってくる。

「何故か、だと? 憎いからに決まってるだろう。憎くて憎くて、百回殺しても飽き足りなそうだ。
……お前のそんな反応を見せられて、ますますその欲求が高まってきたよ。
今からでも、あのぶくぶくと膨れ上がった胸を抉り取ってきてやろうか」
「ふっ……ふざけんな、よ……!!」

 物騒すぎるセリフを吐かれて、黙ってはいられなかった。
未だに震え続ける重い両腕に引きずられて、中腰の姿勢のまま見上げて、

「……ひっ……!?」

 悲鳴が漏れた。

──ホタルの首から上が、ぐにゃぐにゃと蠢いていたからだ。
 陽炎のように霞んだかと思えば、
縦横にぐにぐにと伸び縮みをも続ける頭部。その変形につられるように形を変える顔のパーツが、
顔中を這いまわり続けたりもして──もはやまともな表情など見るべくもないホタルの顔。
 ホラー映画のCG演出でしかお目にかかった事がない現象を目の当たりにして、完全に凍りついてしまう。
 そんな化け物を前にして、無力な少年が出来る事は腰を抜かす事くらいしかなさそうだったが、
顔中を動きまわる眼から、憤怒、嘲笑、そして──殺気までをも含めた光が放たれている気がした少年は、
ガクガクと震える膝にようやく痺れがとれてきた両腕をついて、どうにかへたり込む事は回避してみせた。

「ささ、させねぇぞ、そそんなコト……」

 ガチガチと歯を鳴らしながらで、呂律も回らなかったがどうにかそう口にして。睨み上げた。
今、自分が引き下がったら、本当に雪姫を殺しにでも行かれそうな気がして──
その恐怖は、目の前の怪物に対するそれより大きくて、どうにか踏みとどまらせていた。
 そのまま睨み合いがしばし続いて、やがて先に折れたのは──

「……そんな目で睨むな、流石に傷ついてきた……」

 拗ねたような声が聞こえて、ホタルの顔が一瞬で元のものに戻った。
のしかかってきていたプレッシャーも霧散する。

「ぶはあっ……! はあ、はあっ……!」

 滞っていた呼吸が回復して、膝に手をついたまま大きく呼吸を繰り返す。

「……別に本気で言った訳ではないのに。
憎いのは確かだが、そんな危険なんて冒すものかよ……
確かに "ほらあ映画" の真似事もやってはみたが、
本当に化け物でも見るような目で睨んでくるなんてあんまりだろう……」
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