暁 〜小説投稿サイト〜
白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル
第24話-2 『美月芳夏』
[12/18]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

確かに視覚も触覚も、『何もおかしい所はない』と伝えてくる。

 なのに、頭──いや、心だろうか──が、相変わらず胸にぽっかりと穴が空いたような感触を感じ続けていた。

「なっ……なんだよ、これ……!?」

──ホタルが、最後に何かやっていったのだろうか?
一瞬、理性がそんな事を考えるが、本能の部分ですぐにそれを否定した。

 ホタルが最後に見せた、あの清廉な微笑みに──決して裏なんかないと確信出来た。
つまり今のこの状態は、自分自身の問題だと認識した瞬間、
『ドクン!!』と心臓が強く悲鳴を上げた。

「ぐっ……!」

 痛みはそれ程でもなかったけれど、あまりの衝撃の強さに、全身がビクリと跳ねた。

「一体……どうなって……」

 心臓に手を当てて、見下ろす。
と、その左手にポツポツッと温かい液体が垂れ落ちてきた。
──雨? と一瞬考えたが、そんな天気ではなかったし、温かい理由もわからなかった。
首を傾げて、頬を何かが伝う感触に気付く。……いつの間にか、涙が流れていた。

「え……何……?」

 何故か自分が泣いていた事に気付いて、頬に両手を持って行く。と、

「いっ……!!」

 両目をズキリと強烈な痛みが襲ってきて、自然瞼を閉じた瞬間、ドッと涙が溢れてきた。

「づっ……が……!」

 思わず手で目を押さえる。それでも痛みはまるで和らがない。
立っている事すら出来なくなって、両膝を地についた。
まるで目が壊れでもしたかのようで、相変わらず涙も溢れ続けてくる。
 灼熱の痛みをこらえようと、身体が自然と丸まって。
地面に突っ伏して蹲っていると、やがて痛みは和らいできた。
 しかし、それでも熱い涙は止まらない。
加えて、目の痛みで一時は忘れていられた胸の大穴の感触が蘇ってきた──今度は、
強烈な寂寥感と、悲しみを伴って。

「ふぅうっ……! ぐぅうう……!!」

 あまりの心寂しさに耐えきれず、地面に縋りつくかのように爪を立てる。
けれど、土がそれに応えてくれる筈もなくて。身体がブルブルと震えはじめたところで、

「──計佑くんっ!!」

 自分を呼ぶ声が聞こえて、顔を上げた。
相変わらず溢れ続けてくる涙のせいで、はっきりと視認する事は出来なかったけれど、

──……せん、ぱい……

 声を聞けば、相手が誰なのかはすぐにわかった。

「どうしたのっ、計佑くん! どこか痛むの!? しっかりしてっ!?」

 駆け寄ってきた雪姫が、しゃがみこんで様子を伺ってきた瞬間、

「──あああぁぁあああ!!!」

 悲鳴を上げて、抱きついてしまっていた。
勢いに押されて尻餅をついた雪姫が軽い悲鳴をあげたが、頓着する余裕もなく、夢中でしがみつく。

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ