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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル
第24話-2 『美月芳夏』
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愛らしかった。
 そんな姿に、一瞬幼女状態の事を思い出して。

「ぷっ……はははっ、そっか。お前の本当の性格って、こういう感じだったんだな」

 幼女の頃の振る舞いや、写真で見た無邪気な笑顔。
 長い年月で随分落ち着いてしまったのだろうけれど、
元々はまくらやアリスのような、元気一杯の少女だったのだろうと想像できて。自然に笑みが零れていた。

「……っ……! そう、その顔だよ。最後は、絶対にその顔を見たかった……」

 ホタルの顔に、ふわりと笑みが広がった。
幸せそうなその笑顔は──そう、写真での、榮治の隣で写っていた時のような。

「────」

 その笑みを見た瞬間、計佑の思考は消えた。無心のままで、ホタルの笑顔を見つめ続ける。

「貴方の笑顔が好き。──ずっと、ずっと好きだった」
「……ホタル……」
「……芳夏だよ。最後には、ちゃんと名前でお別れして……」

 あだ名通りの儚い笑みを、芳夏が浮かべて。

「……芳夏……本当にもう逢えないのか……」
「……逢えるよ。きっとまた、捜し出してみせるから……」

 そう告げたホタルの身体が、すっと宙を滑って計佑との距離を詰める。

「……だから今は、とりあえずのお別れ。また、いつか──」

 その言葉を最後に、ホタルが消える。そして、顔に風を感じた。特に、唇の辺りに強く──
 次の瞬間、視界一杯に、小さくも無数の光がパァッと散った。
 その光は、かつて旅先でも見たことのあるもの。
あの時には、日光の下と言う事もあってあまり目立たなかったけれど、
夜空の下で見る、色とりどりの螢のような光は、幻想的な美しさで目に灼きついた。

「…………」

 無心で、右手を持ち上げた。
散りゆく光の中でも一際蒼い一つが、掌に舞い落ちて。
すぅっと皮膚をすり抜けるようにして──掌に吸い込まれた。
すると、その掌から少年の全身へと蒼い光が広がってゆく。

「…………」

 吸い込まれた一つの光以外は、直ぐに全て、宙に溶けてしまった。

 完全に静寂を取り戻した星空の下で、淡く光を放ったままの少年は、無心で右手を見下ろし続けていた。

─────────────────────────────────

「…………」

 やがて、計佑が纏っていた蒼い光がゆっくりと消えていき。
完全に消えたところで、無心だった計佑の意識が覚醒した。
 顔を上げて、ほぅ、と溜息が漏れて。そして、突然────胸に大穴が空いた。

「──なっ!!?」

 慌ててシャツの中を見下ろす。
……勿論、大穴が出来たなんて錯覚だった。
 けれど、自分の目で確認しても、まだ喪失の感覚は消えなかった。
両手で、胸や背中を何度もさすってみる。問題なし
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