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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル
第23話-1 『合宿初日・ソフトボール観戦「……目覚くんは、絶対後悔するから……!」』
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その言葉をぶつけられた硝子ではなく、雪姫の方がビクリと竦んでしまった。
今の計佑の声は、雪姫が聞いたこともないような、押し殺した低い声で……

「須々野さんからしたら、オレの考えるコトなんて単純でバカらしく思えるのかもしれないけどな……
だからって、好き勝手にオレ達の心の中まで踏み荒らしていいってコトにはならないだろッ!!」

 今や、はっきりと憤怒の表情を浮かべた少年の怒声に、思わず後ずさってしまう。
完全に気圧されてしまって、口を挟むどころか、ただ震えることしか出来なかった。

……けれど、硝子のほうは、まるで怯まなかった。硝子だって、自分と同じで、傷つきやすいコの筈なのに。

──……やっぱり硝子ちゃん、こんな風になるって分かってたのに、あんな言い方を……?

 あらかじめ覚悟がなかったら、硝子だってこんな計佑には耐えられなかった筈──
思考の片隅で、そんな事に思い至ったが、それじゃあ何故、硝子が分かっていてあんな態度をとっていたのか……?
そこまでは、震える思考では思い至れなかった。そして、置いてきぼりの雪姫を他所に、

「……くだらないプライドばかり大事にして、
自分の事しか考えてないような人の心中になんて、配慮する必要ないでしょう」

 硝子が嘲るような顔つきで、また計佑を煽るような言葉をぶつけた。
そのあまりの辛辣さに、いよいよ雪姫の心までギュウっと絞り上げられた。
そして、そんな言葉をぶつけられた計佑の方は──スッと目を細めると。

「……もういい」

 言い捨てたその表情は、落ち着いた──というより、無表情なものだった。
怒りが収まったというより、もはや硝子に関心をなくしたかのように。
 そして、足早に歩き出した──雪姫のことも顧みずに。
 けれど、そんな少年に、臆病な雪姫が声をかける事など出来るはずもなくて、ただオロオロと見送っていたら、

「話は終わってないでしょう、何逃げてるの」

 すれ違った少年の背中に、向き直った硝子が声をかけた。
けれど、計佑は全く歩みを止めることなく、振り返りもせずにどんどんと先を行こうとする。が──

「──まくらをあれだけ傷つけておいて、逆切れなんか出来る立場だと思ってるのっ!!!」

 そんな硝子の怒声で、雪姫がビクリと震え、計佑も流石に歩みを止めた。
 初めて聞く硝子の怒鳴り声にすっかり萎縮してしまっている雪姫の前で、硝子の背中が震えていた。
計佑がゆっくりと振り返ってくる。

「……傷つけたってなん、だよ……」

 怪訝そうな顔で振り返ってきた計佑の声が、途中で一瞬途切れて。戸惑った顔つきになった。
雪姫の位置からは硝子の後ろ姿しか見えなかったから、計佑が硝子の顔に何を見たのかは分からなかった。


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