第63話 バナナは腐る寸前が美味い!
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ほら、食え」
「……」
「食わなきゃ今度はお前が此処の屍の仲間入りになるんだぞ」
少年の言葉を聞き、少女は足元に転がっている屍の群れを見た。このまま少年の差し出す握り飯を食わなければ待っているのは飢え死に、即ち死しかない。
だが、今は父を探さなければならない。どちらを優先すべきなのか?
己の生か? それとも行方すら分からない父探しの先に待つ死か?
答えは明白であった。少女は無言のまま少年から差し出された握り飯を受け取り、それに齧り付いた。
「親父を探すにしたって、死んじまったら出来なくなっちまうだろうが。もう少し自分を大事にしろよ」
「うん……うん―――」
握り飯に齧り付きながら、少女はまたしても涙を流した。だが、今度の涙は違った。生きている事に対する喜び。そして、久しぶりに出会えた人間の優しさに対する涙であった。
「あ、有難う……でも、良いの? 私におにぎりくれて」
「良いんだよ。どうせこれもあの屍からひったくった奴なんだし。なくなりゃまたどっかからひっぺがしてくりゃ良いさ」
心配する少女に対し少年は気楽にそう答えた。その少年の言葉が少女の中に安心感を与えてくれた。すると、ずっと暗い顔をしていた少女の顔に、ゆっくりと笑みが浮かびだした。
少女の笑顔を見て、少年もまた笑みを浮かべる。
「お前、笑うと結構かわいいんだな。やっぱ女は泣き顔よりも笑顔の方が良いや」
「え? そ、そう……かなぁ?」
真顔でそう言われ、思わず頬を赤らめる所もまた年頃の可愛らしさだった。そんな少女を見ながら食べる握り飯は、また格別だなぁ、そう少年は心の内にてひっそりと思うのであった。
***
「なんだろう。今日の夢?」
変な夢であった。全く見た覚えのない不気味な戦場。そして、其処で泣きながら父を探している自分。いや、正確には自分に良く似た少女の事だろう。そして、その少女が出会った銀髪の少年。
不思議な夢であった。何故、全く見覚えのない場面の夢を見るのだろうか? その夢が一体何を物語っているのだろうか?
「考えても分からないや。それに、折角起きたんだから中を歩き回るかなぁ」
呟きながら、なのははベットから出た。今彼女が居るのは大江戸病院の一室だった。部屋は白い壁で統一されておりその中には幾つかのベットと敷居のカーテンが間あいだに置かれる形の部屋だった。
ある意味で子供にとっては退屈この上ない部屋だと言えた。しかも部屋の中には今自分しか居らず、話し相手がいない。どのみちこの部屋に居ては退屈のあまりバターになってしまいそうだ。そう思い病室を飛び出した。
病室の外では多種多様な患者達が右往左往しており、そんな患者達の動向に常に目を光らせている
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