暁 〜小説投稿サイト〜
機動6課副部隊長の憂鬱な日々(リメイク版)
第2話
[6/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
り口からは見えづらい奥まったところにある。

ゲオルグは席に座ると机の上の端末を開いて、前日の任務の報告書を書きはじめた。
キーボードの上を踊るように動きはじめたゲオルグの指であったが
数行書いたところで止まり、のけぞるようにして椅子の背に身体を預け、
天井のある一点を見つめて固まってしまった。

彼の眉間には深いしわが刻まれ、その表情は何かを睨みつけるようにも見える。
折悪くゲオルグに書類を提出しに来た工作班の士官−シンクレア・クロス1尉は、
ゲオルグの表情に若干怯えつつも恐る恐る声を掛けた。

「あのー、ゲオルグさん。 いいですか?」

シンクレアの声に反応してゲオルグの瞳がギロリと動き、シンクレアの顔を
確認すると身体を起こして居住まいを正した。

「シンクレアか、なんだ?」

「昨日の任務の戦闘詳報です。 全員分ありますので、確認をお願いします」

「わかった。 すぐ見るから、ちょっと待ってろ」

ゲオルグはシンクレアが差し出した書類の束を受け取ると、
その中身に目を通し始めた。
一方、シンクレアは近くにあった椅子を引っ張ってきて、
ゲオルグの机の前に陣取った。

手持無沙汰なシンクレアはサクサクと書類を読み進めていくゲオルグの様子を
ぼんやりと眺めつつ、先ほどのゲオルグの様子に思いをはせていた。

(あれは、何かを考え込んでる顔だったよなぁ・・・なんだろなぁ)

シンクレアはゲオルグの考え事の正体についてあれこれと想像しつつ、
ゲオルグが書類を読み終えるのを待っていた。

(そういえば、さっき1佐に呼ばれて出てったよなぁ。
 戻ってくるまでに結構時間もかかってたし、揉めてたのかなぁ?
 時期も時期だし人事かなぁ? 昇進か異動か・・・)

しばらくするとゲオルグが書類を読み終わって顔を上げる。
その視線の先にはぼんやりと宙を見つめるシンクレアの姿があった。

「これでOKだ、ご苦労さん」

「・・・えっ!? あ、はい」

ゲオルグが声を掛けると、自分の世界に入っていたシンクレアはフッと我に返り、
まじまじとゲオルグの顔を見つめた。

「ゲオルグさん。 さっき1佐に呼ばれたのって何の話だったんですか?」

「秘密だ」

自分の問いかけににべなく答えるゲオルグに対し、シンクレアは
非難めいた目を向けた。

「そんなこと言わずに教えてくださいよ」

「ダメ。 とっとと行け」

ゲオルグが追い払うように手を振ると、シンクレアは不満げに口をとがらせながら
自分の席に向かって去っていった。
シンクレアが自分の席に着くと、ゲオルグは大きく息を吐いて再び目を閉じた。

(まあ、言えるわけないよな。 引き抜き工作を受けてたなんて・・・)


[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ