第15話 嫌いな奴
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、より慎重に行って欲しい……」
そう。俺の初めての査閲先はよりにもよってロボスの率いる艦隊だった。
事前に渡された資料によれば、ラザール=ロボス中将は現在四五歳。中将に昇進してから二年が経過し、あと数年で間違いなく大将に昇進すると言われている。オスマン大佐が言うように、優れた戦術指揮能力を持ち前線でも後方でも優れた業績を挙げてきた。精力的に幕僚グループを纏め上げる力量は当世一との評判だった。
もっとも第六次イゼルローン攻防戦以降、食器の専横を許し帝国領侵攻で大損害を出した、プライドだけデカイ中年デブしか知らない俺としてはにわかに信じがたい。それはともかく、ロボスの内外における評判が高いことから、査閲側がうかつな事をしでかして宇宙艦隊司令部と統合作戦本部間でトラブルの種になるような事は避けたい……オスマン大佐の言外の気持ちを、査閲官達はみな承知していた。
そんな緊張した俺達査閲官は、巡航艦からシャトルに、シャトルから戦艦アイアースへと移乗すると、案内に出てきた幕僚に連れられて、すぐさま戦闘艦橋へと通された。査閲首席のオスマン大佐と次席のフィッシャー中佐が、戦闘艦橋の一番高い指揮官階層に向かい、一番下っ端の俺は、同じ尉官らと一緒に一番下層のオペレーター階層から、巨大な差段艦橋を仰ぎ見ていた。
「……殺人ワイヤーに自壊雛壇か」
「なにか言ったかね?」
原作そのままの、艦隊旗艦の指揮中枢部としてあるまじき非安全性に心底がっかりしていると、俺は背後から声をかけられた。シャトルから降りてここまで、案内役の幕僚以外に査閲官へ声をかけた者は一人もおらず、丁重な無視か、意図的な無視か、汚物でも見るような斜視以外浴びてこなかった俺達に声をかけるのはどんな物好きかと、俺は振り向いてその声の主を確認すると、不思議そうな、珍獣を見るような視線で中年寸前の男が俺を見ていた。そしてその周囲で査閲官達が直立不動で敬礼しているのが分かった。
「随分若い査閲官だね。君は……」
「し、少将閣下」
階級章を見て俺は慌てて敬礼すると、その少将も悠然と答礼する。何処にでも良そうな、それでいてどこかで見た事のある少将だ。褐色の髪に、肉付きの薄い頬。グレゴリー叔父やフィッシャー中佐程ではないにしても、穏やかな雰囲気を纏っている。いつだったか似たような顔の作りを見たような気がするが……
「ボロディン少尉!! こちらはグリーンヒル少将閣下だぞ!! さっさと申告せんか!!」
(かなり年配の)同僚の言葉に、俺は体中に電流が走ったのを感じた。
ドワイド=グリーンヒル。的確かつ堅実で整理された判断を下せる軍内部でも評判の良識派。軍人としては異様に気配りができ、バランス感覚に富んでいるが故に、二〇年来のライバルであるシトレ・ロボス両者の補佐役を務め
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