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或る皇国将校の回想録
第一部北領戦役
第十一話 苗川攻防戦 其の三
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 ――さて、この状況では保険の必要性が高まった。ここに捕えしは東方辺境軍の花形、胸甲騎兵連隊の士官でござぁい、さてさて、この御仁の素性は如何に?
 
「<帝国>陸軍第3東方辺境領胸甲騎兵聯隊第一大隊第三中隊指揮官
ゴトフリート・ノルディング・フォン・バルクホルン〈騎士〉大尉です。
貴官の様な勇気と道義のある敵と出会えた事を身に余る光栄とします。」

――新城大尉の龍神の加護は厚い様だな。騎士!それも名前からすると〈帝国〉公用語が創られる以前からの騎士の家系!!
素晴らしい!最高の切札になる。

「過分の言葉、痛み入ります、大尉」

ちくり、と羞恥心が刺激される。

「大尉、負傷は止血しておけば命に別状は無く。
後遺症は残らないそうです。
当面は安静にしていて下さい。」
療兵を呼んで安全な場所に移送させる。
「さて、新城大尉を呼んでくれ。
側道陣地の指揮権は鋭兵中隊長に預けさせろ。」
下らない、羞恥よりも撤退の算段をつけなくてはならない。

「新城大尉、入ります。」
入ると俺の顔を見て疑問の色をうかべた。
 ――いかんな、気持ちの切替が出来てない。
「良い知らせと悪い知らせがある。どっちを聞きたい?」
気分転換の軽口を叩く。

「・・・悪い知らせから聞きましょう」

「緊急の要件がある。
午後五刻まで我々三人ともに詰めなくてはならない。」
表情を変えずに次の質問を飛ばした。

「良い知らせは?」

「転進支援本部から撤退の許可が降りた。
午後第五刻までに詳細を返信すれば撤退できる。」
新城も何とも言えない表情を浮かべる。豊久が知らせを受けた時と似た顔だ。

「それで、だ。渡河した部隊はどうなった?」
「相応の損害を与えました。夜間に動く程無謀とも思えませんが・・・」
 珍しく言葉を濁す。
「お前さんにしては珍しいな。何かあるのか?」
「糧秣の問題で焦っているようです。糧秣が尽きる前に強襲してくる可能性があります」

「北美名津まで一日はかかる。その前に追いつかれるかね?」

「恐らくは。再び糧秣を優先的に回して
一個中隊程度でも追ってくる可能性があります。」

「擲射砲を廃棄して急がせても辛いか。」
 負傷者を運ぶ為に馬車を使うので騎兵砲は足並みが揃う。

「此方の戦闘可能人数は現在五百五十名程度、剣牙虎も十匹いる。
除雪された街道で渡りあっても負けはしないでしょうが――何人死ぬか解らない。導術兵に警戒させるしか無いでしょう」

「危険だが日没直前に擲射砲を動かして宿営地を砲撃させるか?
中央を狙えば擾乱程度にはなる。」

「無理です。運に頼りすぎていますし、時間的に厳しい。
狙い通りに行かなかったら、追撃されます。
そうなったら砲を
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