EP.23 幽鬼の巨影
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タルが自分を求めてここに来て、そして来た時よりも安定したのが何より嬉しかったのだ。ワタル自身がバリケードとなって外側に開く扉が開かず、今すぐ彼に抱きつけない事を恨めしく思う程度には。
「……」
「エルザ? どうし――――!?」
「なんだ!?」
心で燃える熱い感情に身悶えして黙ってしまったエルザに、ワタルはどうしたのかと声を掛けようとしたのだが……それは中断することになった。
突然地鳴りが響き、ギルドも揺れ始めたのだ。
「みんな、外だ!!」
「! 先に行くぞ」
「ああ、頼む!」
氷水を掛けられたように冷静になり、事態の把握しようとする二人の耳に、見張りをしていたアルザックの尋常ではない焦りの声が届く。
今この状況でただの地震とは思えない明らかな非常事態に、ワタルはエルザに先んじてギルドの外へ駆け出すと、地下室にいたメンバーは既に表に出ていた。
「あれはいったい……!?」
「おい、冗談だろ?」
「こんなバカな……」
個性豊かで有名な妖精の尻尾だが、この時は誰もが同じ感情――驚愕を抱き、口を開けて冷や汗を流していた。
「これは、想定外だ……まさかこんな方法で攻めてくるなど」
「予想しろ、って方が無理だろ、これは……」
地響きが断続的に続く中、バスタオルを身体に巻いただけという格好のエルザも冷や汗を流して端正な顔を歪めて呻き、ワタルでさえも彼女の破廉恥な格好を注意するどころか、乾いた笑いしか出てこない。
古風な装飾が施された巨大な大理石の塊……城としか呼びようがないそれは、あろうことか歩いて湖を渡り、妖精の尻尾のギルドへ向かっていたのだ。
古城の側面に付けられた3対6本の足が湖に着水するたびに轟音と共に地響きが響いて波を起こし、妖精の尻尾の魔導士達を濡らしていたのだが……そんな事を気にする者はいなかった。
古城の中央の塔に掲げられた旗に刻まれているのは幽霊を模した紋章。
という事は……
「ギルドが歩くなんて聞いてねえぞ、まったく」
幽鬼の支配者の本部が直接妖精の尻尾を攻めるために腰を上げた、という事に他ならなかった。
「魔導集束砲“ジュピター”用意」
妖精の尻尾の驚愕が冷めるのも待たずに、幽鬼の支配者本部の玉座の間に座るマスター・ジョゼの号令で古城の入口に当たる部分の上部から巨大な筒――砲台が姿を見せ、予め装填されていた魔力を集め始める。
そして……
「放て」
たった3文字の単語でトリガーが引かれ、ギルドを、そしてのこのこ外に出てきた魔導士達を吹き飛ばし、破
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