EP.23 幽鬼の巨影
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……今は裸なのだ。そう推測しても気休めにもならない。
急いで清潔なバスタオルを取って身体を覆うと口を開く。
「ワ、ワワワタル!? 緊急の件なら少し待て! 今出るから……」
「いや、そのままでいい。そのまま聞いてくれ……まずマスターだが――――」
静かな声音でマカロフの容態とミストガンの件などを話すワタル。
誰が聞いても静かで平坦に聞こえる声だったのだが……エルザには彼が何かを堪えているようにしか思えず、抗議もできずにそのまま聞くしかなかった。
「――――そうか。ミストガンもラクサスも、こちらには来れないか……」
「ああ……」
報告の間、せまい脱衣所で身体や髪を拭いていたエルザ。
今はタオルしか身に着ける物が無い彼女は当然落ち着かなかったのだが……常識人のワタルがわざわざ自分がシャワーを浴びている時に話し掛けた事が引っ掛かり、そのままでいるしかなかった。
「……なあ、エルザ。自分のせいだって思ってるのはお前だけじゃない……俺も同じだ」
何かが擦れるような音の後、予想より低い位置から聞こえる声に、ワタルが廊下と脱衣所を隔てる扉を背に座りこんでいると分かったエルザは、同時に彼が今回の事態に堪えている事も察し、廊下への扉に身体を持たせ掛けて座る。
「こんな事になるなら、俺も行けばよかった……ってな」
「……お前がマグノリアにいてくれたからこそ、ルーシィは無事だったんだ。私が言えたことではないかもしれんが、あまり自分を責めるな」
「それは結果論だ。俺が個人的な感傷に囚われなければ、もしかしたら――」
「その仮定に意味が無い事は分かっているのだろう?」
薄い扉一枚挟んでの会話では、互いの感情を推し量る術は声音しかない。
透視能力を持っていないエルザには、静かな声音に混じって後悔と弱音を吐く彼の表情は分からなかった。
繊細な彼が、今回の件で何もしなかった事を悔いているのは痛いほど分かったが。
「まあ、な……それでも、マスターや連中が怪我したのを見るとどうも、な。流石に少し堪える」
「私だってそうさ。それに、弱音を見せてくれるのは嬉しいが、他の者の前ではそんな姿は見せるなよ?」
マカロフが戦線離脱、ミストガンとラクサスも不参加の今、エルザとワタルは妖精の尻尾の中核であり柱なのだ。無論、彼の弱い姿を他の者に見せたくないという独身欲のようなものもあったが。
励ますようなエルザの声に、ワタルは少し笑う。
「分かってるよ……ありがとう、エルザ」
「え?」
「少し楽になった。お前の声が聞けて良かったよ」
穏やかなワタルの声に、エルザは顔どころか身体中が熱を持つのがはっきりと知覚できた。
最初の報告も勿論目的の一つだったのだろうが、ワ
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