EP.23 幽鬼の巨影
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た後、ワタルの質問に頷いて肯定したミラジェーンの表情は救援を断られたとは思え無い程に動揺は見られない。
ワタルが去った後、それに疑問を覚えたカナは彼女に尋ねた。
「わけが分からないね……ラクサスの後ろって、なんの事だい?」
「あら、カナは気付かなかったの? ラクサスの後ろに廃墟があったんだけど」
「いや、それは流石に気付いてるけど……って、まさか……?」
もしやと思い至ったのか、顔色を変えるカナに、ミラジェーンは頷く。
「ええ……あれはファントムの支部よ。多分、少なくとも5個は潰してるわね」
「5!? いや、それよりあのラクサスが……?」
「私も意外だったわ。ラクサスも仲間を大事にしてたのよ」
「ワタルの影響かねぇ……」
絶対認めようとはしないだろうけど、と笑うミラジェーンに、カナも違いないと笑う。
幽鬼の支配者の問題は解決していないが、力が全てを信条とする暴れん坊のラクサスがファントムの支部を潰して回っている……意外な男の意外な成長が、二人には嬉しかったのだ。
だが一方で……二人にも、ましてやラクサスにも考えもしない事があった。
成長の切っ掛けがなくなれば、どんな化学変化を起こすのか、という事を……。
「ワタルといえば、いいのかい?」
「なにが?」
「あれは絶対どこかで無理してるね。気付いていない訳じゃないんだろう?」
カナの口調はからかう類の物ではなく、単にミラジェーンを気遣ってのものだった。それに対し、ミラジェーンは笑って答える。
「ええ。でも、それは私の役目じゃないから……」
「ふーん……ま、アンタが良いなら、私が言う事じゃないけどさ」
ミラジェーンの言葉は要領を得なかったがカナには何となく理解できたし、仲間といえども安易に踏み込めないデリケートな話題だったため、これ以上触れる事は無かった。
= = =
「(あの時、私もマスターについて行けば……)」
エルザはシャワーを浴びながら自分を責めていた。降り注ぐ温水は汗や汚れを流していくが、心の暗い感情・自責までは流してはくれない。
心を占めるのは、足手まといでもジョゼの元へ単身乗り込むマカロフについて行くべきだった、狡猾なジョゼが何の策も用意せずに待っているなどと、何故考えてしまったのか……そんな後悔だった。
自責に俯いたまま、壁に当てた手を強く握りしめる。
「私の、せいだ」
「……エルザ、いるか?」
「!?」
思わず漏らした独り言だったのだが……良く知る男の声、聞き間違えるはずの無い声が通り、エルザは慌ててシャワーを切って振り向く。が、脱衣所も兼ねたシャワー室に彼の姿は無い。
扉を隔てた廊下から話し掛けているのだろうが
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