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Element Magic Trinity
紅蓮の傍に寄り添うのは
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つ魔法。大体万能だが、この世にあるもの全部を“描ける”訳じゃねえ。さっきから炎や水みたいな属性そのものしか使ってないから、扱えるのはそのくらい……だと思う」

曖昧で悪ィ、と片目を閉じて両手を合わせたアルカに、十分だと言うように頷く。
キッと前を見据えると、エストはピクッと肩を震わせる。何故震えるのかは解らないが、その一瞬だけだったので大した事ではないのだろう。

「……すまないね、ミラ嬢」
「?」

突然出てきたのは謝罪だった。
眉を顰めると、エストは杖を床に突き付ける。

「!」

それと同時に、ミラの足元に魔法陣が展開した。
そこから魔力の鎖が伸び、ミラの腕を絡め取る。両足にも鎖が巻き付き、動けなくなる。
僅かに開いたエストの口から囁くような声で何かが唱えられているのは解るが、何を言っているのか解らない。

「アルカンジュの恋人である君にこんな事はしたくないんだが…これも私達とティア嬢の為。許してほしい」
「ティアの為……!?」

どこが、と叫ぼうとした。
捕らえて、苦しめて、それのどこがティアの為になる?
ようやく気付いた。ティアが“この間の仕事の依頼主から”といっていたあの手紙。あれはシャロンからの“早く帰って来なさい”という手紙だったのだ。
いつもはハッキリと言うティアが珍しく言うのを躊躇っているようで妙だとは思ったが。

「違う!あなた達のやってる事はティアの為なんかじゃない!」
「……だとすれば、それは君達がやっている事もそうだろう」
「え…?」

その声に僅かな怒りが含まれているのに気がついて、ミラは戸惑う声を出す。
鏡に映したかのようにアルカにそっくりなその顔は、黒いつり気味の目に怒りを宿して静かに告げた。





「ティア嬢が孤独を望んでいる事を、君達は誰よりも知っているはずだ」





吐き捨てるかのような言葉には、怒りがあった。
更に、エストは告げる。

「それなのに、君達は“ティア嬢の為に”と交流を続けた」

魔力の鎖から、ビリビリと震えるような魔力を感じる。術者であるエストの怒りに反応しているのだ。
展開する魔法陣が禍々しく輝き、ミラは脱出を試みる。が、鎖はピクリともせず、ミラを拘束するという役割を忠実に果たしていた。
後ろから聞こえた小さい声に出来る限り顔を向けると、アルカも両腕を鎖に拘束されている。

「確かにそれは君達なりの優しさなのかもしれない、けれど」

そして、エストは最後に呟く。
鋭い目を迷う事無くミラに向けて。




「その優しさは、ティア嬢の事を何にも考えていないね」




その瞬間。
ミラの足元に展開した魔法陣から、目も眩むほどの光が溢れた。








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