DAO:ゾーネンリヒト・レギオン〜神々の狂宴〜
第十一話
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、ひいては、後の時代で《ブレイン・バースト2039》と呼ばれることになるゲーム、及びその同型のゲームに搭載されたそれとは、少し原理が異なる。
アンダーワールドやBBの加速機能は、脳に届く信号を、その直前でオーバークロックする、という者だ。対するハザードのこの異能は、脳に届いた後で、その処理速度をオーバークロックする。
つまり、全てを脳で行っているのだ。当然、脳には相応の負荷がかかる。ハザードはこの異能を所持するが故に、一日の大半を睡眠に費やさなければいけないという制約を課せられていた。
そしてそれだけの対価を払っているにも関わらず、この力は万能ではない。使用時間の制限も、STLに備えられた加速機能よりもずっと強い。
――――構わない。
ハザードは内心で呟く。
ハザードの脳裏に浮かぶのは、浮遊城での頂上決戦で、自らと剣を打ち合わせたセモンの姿だ。ただただ、友情だけを信じて、ハザードを倒す為に戦った。
――――今だって。
記憶を封じられ、見える世界を操られ、爪牙として戦わされているセモン。奴の視界を取り戻す。暗雲を吹き払え。道を開くんだ。
ガキン!
ソードスキル《フォカロール》の一撃に渾身の力を込めて、ハザードはセモンを弾き返す。両者の距離が開く。
ハザードは剣を下ろすと、静かに言葉を紡いだ。
「……清文、聞こえているか」
「……俺と琥珀の平穏を乱す奴の声を、聴く必要なんてない」
闇色の外套を翻して、セモンはハザードを睨み付ける。声は届かずとも、会話は成立しているようだ。
セモンの言葉に、どこか淡い懐かしさすら覚えて、ハザードは答える。
「なるほどな。お前も、今の俺と同じ思いを、アインクラッドでしたわけだ。声が届かない――――決して覆せない意志が、目の前にある。救うためには滅びしかない」
かつて――――ハザードは、アインクラッド第七十五層で、兄であるヒースクリフ/茅場晶彦に加担し、セモンと切り結んだ。あの時、戦いをやめよう、と懇願したセモンに対し、ハザードはその手を振り払い、「兄さんの邪魔をする奴は、みんな敵だ」と答えた。
今のセモンは、それと同じだ。
だが、あの時のハザードと違って、セモンを取り戻すのはいたって簡単なのだ。今のセモンは、闇にとらわれているだけ。自ら闇を吐き出していたかつてのハザードと違って、セモンにあるのは外付けの闇だ。
セモンを取り戻すために必要な行動はたった一つでいい。彼に、ハザードの声が聞こえるようにすればいい。その心を覆い尽くす闇を、吹き飛ばしてしまえばいいのだ。
実際のところ、脳加速を行う意味は、ほとんど不要であった、と言っても過言ではない。なぜな
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