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ゾンビの世界は意外に余裕だった
17話、丘陵の手前で(前編)
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それに乗用車、宅配便の冷蔵車で行く」

 突撃銃でアンドロイド達が武装しているとはいえ、戦車と装甲兵員輸送車で乗り込むよりはかなり友好的だろう。ついでにお土産として弁当百二十食分と自衛軍基地で見つけた缶詰め千個と缶入り乾パン千個を用意させる。

 さて恒例の車列だ。

 一台目……軽装甲高機動車にマイルズ、S3三体。

 二台目……ワンボックスに俺、キャリー、レグロン、四等兵四号、S3ニ体、衛生兵一号(やっぱり狭い)

 三台目……宅配便の冷蔵車にS3二体。

 四台目……四等兵八号、S3ニ体、特殊工作兵グレーブス。

 他に装甲兵員輸送車二輌にM-27十ニ体とS3六体、スパルタ兵型のロムスを乗せて待機させる予定だ。

「ボス、出発準備が整いました」

 キャリーの報告に頷いた俺は、本館の前に止まるワンボックスに乗り込んだ。そこで防弾チョッキとヘルメットを着せられる。

 とはいえ俺だけ防御力を高めていたら変な誤解をされそうなので、一部のアンドロイドに防弾チョッキとヘルメットをつけさせた。


 林道には秋の気持ちの良い風が吹いている。ドライブするなら周りの景色を見れる昼間が良い。

 さて正門から県道までの間で東に向かう側道は三本しかない。このうちニ本が別荘に出るのだが、舗装してある道は一本。 車列は当然ながら舗装されているニ本目の側道に入った。道幅三メートルの林道だ。

 やがて南北にのびる丘陵が見えてきた。地図を見るとここから別荘地までの間、三つの丘が立ちふさがっている。

 装甲兵員輸送車を擁する後続部隊は最初の小高い丘の手前で一時待機させる。そこより前に出すと、丘の頂上から丸見えになる。

 だが、どういうわけかその丘にも次の丘にも高橋グループの監視がいなかった。特に第二の丘からは別荘地の一部を監視できるので、何かの罠を心配したくなる。

 俺はバックアップの装甲兵員輸送車は第一の丘の西斜面にまで進ませ、本隊を最後の丘に向かわせた。

「ボス、頂上に人がいます。別荘地に向かって旗を振っています」
「よし、丘の下で止まり、こちらも白旗を掲げよ。それで誰かがくるだろう」

 と思ったけど俺は一時間ほど放置された。まあ非武装でも警戒される状況で、研究所のアンドロイド達は車外で突撃銃を持って立っているのだ。武装強盗に思われても文句は言えない。

 さらに三十分ほど待たされ俺は、頂上に向けて一号車の人員を徒歩で送り込むか悩み始めた。

「ボス、周囲を二十人ほどの人間に囲まれています」

 車列の周囲には高さ八十センチほどの草が生い茂っている。そこなら二十人ぐらい余裕で隠せる。その正体は別荘組の連中の他考えられない。

 アンドロイド達があからさまに戦闘態勢を取り始めた。キャリーに確認すると、迫撃砲などを保有してない限りこちらの脅威にならないとのこと……

 
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