■■インフィニティ・モーメント編 主人公:ミドリ■■
壊れた世界◆ミドリという男
第五十話 彼は誰だ
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ミドリがミズキなのかどうか、ってことだよね。ミドリがミズキであるなら、ミズキは一旦回線が外れたあと、もう一度『ミドリ』っていうIDでログインし直したことになる。ミドリがミズキでないなら、ミドリは死んだミズキのナーヴギアをかぶり、それでログインしたってことだ」
マルバがこれまでの話を一旦まとめると、その場の皆は考え込んだ。
「ミドリはどう思うの」
マルバが聞くと、ミドリは俯いていた顔を上げた。手に、《リトル・エネミーズ》の集合写真を持っている。
「俺にはわからない。……だが、この写真を見てたらいくつか思い出したことがある。君はマルバっていったよな。君は円盤状の投擲武器を得意としていたはずだ。シリカ、君はリーチの長めの、刺突を優先した短剣を好んで使っていた。アイリアは棍を兼ねた短槍を得意としていた。そして、この男――ミズキは、大盾を攻撃に転用していた。俺はこの男の後姿をよく見たことがある。俺は何度も君たちの戦いを見ていたんだ。……俺は、君たちを憶えている。そうだ、思い出してきた。君たちのギルドホーム――確か借家だったけど、あれはのどかな小川のほとりにあった。そこで、マルバとシリカはよく攻略の相談をしていた。ミズキとアイリアは新聞を読んだり、おやつを食べたりしてだらだらしていた。……ここまで憶えているってことは――俺は、ミズキなのかもしれない」
決定的だった。マルバは頭を抱えた。
「……信じられないけど、ミズキはあの時、死なずに生きていたのか……」
ユイが首を振ってマルバの言葉に反論した。
「いいえ、違います。ミドリさんの今の発言は、ミドリさんがミズキさんではないという決定的な証拠です」
その場の全員がぎょっとしてユイを見た。ユイはすこしたじろいだが、一言でその証拠を示した。
「人は、自分の後姿を見ることはできません。先ほど、ミドリさんはミズキさんの後姿を見たことがあると言いました。それなら、ミドリさんがミズキさんであるということはありえません」
あまりに論理的、あまりに反論のしようがない発言だった。ミドリがぽつりと、更に決定的な言葉をつぶやいた。
「……確かに俺は、この男の戦う姿を、後ろから見たことがある。いや、ずっと見ていた。戦闘中も、ギルドホームにいるときも」
議論は白紙に戻った。この男が一体誰なのか――その問いに答えられる人物は一人もいなかった。ただし。
「ひとつだけ、ミドリさんの言ったことに矛盾しない仮説を思いつきました。突拍子もないですし、正直ありえないと思います。でも、他の可能性を捨てていくとこれしか残りません」
ユイが、はっきりと言い切った。
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